156話 【第二ラウンド:議論フェイズ】①
【第二ラウンド:議論フェイズ】
(再び、GMによる25分間議論の開始が宣言される。
第一ラウンドに引き続き、議論中は部屋に二人きりになることで密談も可能、とのこと)
(不穏な雰囲気のBGMが流れ始める)
(六人が、お互いの顔色をうかがっている)
(口火を切ったのはやはり、遠峰万葉だ)
万葉「さて、と。それじゃあまた、情報交換を始めようか」
狂太郎「だな」
万葉「今回は早速、妾から話させて貰うよ」
(万葉が、片付けられたテーブルの上に、順番に証拠品を並べていく)
(並べられた証拠品は、
・数字が書かれたポスターのようなもの
・日本語で『ごくうす』と書かれた小箱
・先の曲がったヘアピン
・タイトル不明の手帳が一冊)
薄雲「おー。大盤振る舞いにゃねー」
万葉「気付いたんだよ。此の儘、犯人に逃げ切られるほど、癪に障るこたぁ無いってね。
薄雲「にゃるほど」
万葉「って訳で今回は、全部の情報を公開することにした。一応、順を追って解決していこう。
まず、《賞金首のポスター》だ。”ああああ”の部屋にあった証拠品で、多分、例のレベル上げ犯について書かれた物だね。さっき薄雲に内容を読んで貰ったところ、『背格好、種族不明、女』とある」
呉羽「女……?」
万葉「何処まで信憑性のある情報かは分からんが、此の時点で、男の狂太郎はかなりシロくなるな。――因みに”ああああ”、何で貴女、此れを持ってたの?」
ああああ「そりゃーもう。悪者をやっつけるためさ! 私は正義の、賞金稼ぎってやつだからね!」
万葉「或いは、……証拠隠滅のために自分でポスターを剥がした、とか?」
ああああ「んもー。疑り深いなあ」
万葉「思考を固定しない様にしてるだけ。――ええと、次は此の、『ごくうす』?って書かれた箱だ。狂太郎さんの部屋から出てきたものだね。中を見てみたけど、ぬるっとした粘液に包まれた薄いゴム状の物質が入ってるだけだった。……妾は此れ、非常用の水筒か何かかと思ったんだけど」
狂太郎「………………………」
万葉「あの。……怖い顔してないで、何とか言ってよ」
狂太郎「ナントカ」
万葉「古いギャグは止めな。流石に怒るよ?」
狂太郎「それは……避妊具だな」
万葉「へ?」
狂太郎「コンビニとかでも売ってるだろ? 《コンドーム》だよ。男性器に装着するためのものだ。――非常時の水筒に使えないこともないが」
万葉「うげっ! ま、マジかよ! 触っちゃったよ、妾……」
狂太郎「デリケートな器官につけるものだ。汚いものじゃないさ」
(呉羽と薄雲が、不思議そうな表情で《コンドーム》を眺めている)
呉羽「わっちらには、見慣れんモンだねえ」
薄雲「こーんにゃ物理的な代物に頼らにゃくても、避妊魔法を使えばいいのに」
ああああ「つまり狂太郎クンは、私たちの世界の住人じゃない、ってことじゃない?」
狂太郎「…………………」
ああああ「そこんとこ、どーお?」
狂太郎「………そうだな。一応、ここで告白させてもらおう。ぼくは異世界人だ。この世界を救済するためにやってきた」
ああああ「ふーん。私たちの、”救世主”サマってところ?」
狂太郎「そんなとこだな」
ああああ「ってことはぁ。ぶっちゃけ、《トイレットペーパー》なんて持ってる遠峰万葉ちゃんも……お仲間、かな?」
(万葉、唇を尖らせて)
万葉「まあ、ね」
ああああ「ふんふん。被害者は、”救世主”の仲間だった、と。だから、”正義の味方”ってことか。――これで、第一ラウンドの情報と繋がったねっ」
(お気に入りのパズルを解いているように、”ああああ”は笑う)
万葉「じゃ、次の情報。先の曲がったヘアピンな。グレモリーの部屋から出てきたものだ」
薄雲「なに、それ?」
狂太郎「あっ。それ、オープンワールド系のRPGで見たことあるやつ! 《ピッキングツール》だろ」
万葉「妾も同感だね。ねえ、グレモリー。コレに関して、なんか言い訳、ある?」
グレモリー「……………………」
万葉「グレモリー、さん?」
グレモリー「~~~~~~ぴーぴぴ~♪」
万葉「言い訳、下手糞かよ」
狂太郎「……グレモリーが、何らかの犯罪と関わっていることは間違いなさそうだな」
万葉「んで、此れで最後の証拠品だ。薄雲の部屋から《手帳》が一冊。これはまだ、誰にも翻訳して貰ってない。呉羽、頼める?」
(呉羽、《手帳》を手に取り、ざっとその中身を確認する)
呉羽「……ん。これは『時空系魔法使いの心得』について書かれたものでありんす」
万葉「ほう? さっき出た、《時計型の勲章》を裏付ける証拠だね」
呉羽「でも、――ちょっと待って? この《心得》によると、『時空系魔法使いは、常に勲章を身につけておかなければならない』って。なんでも『時間と空間を操る魔法は、人の尊厳を踏みにじることが可能』だから。『それを隠匿する行為は、違法に当たる』って」
万葉「……む?」
(薄雲、ネコ耳を折りたたんで、頭を抱えている)
薄雲「ふにゃーっ」
万葉「どうも、焦臭く成って来たじゃ無いか。なあ、薄雲。なんで貴女、勲章を身につけてない? 妾の記憶じゃ、貴女が其れを付けてる所、見た事が無いんだが」
薄雲「それはー………そのー………」
万葉「応えられない?」
薄雲「うみゅ。でも、信じて欲しいにゃ。別に、悪気があるわけじゃにゃいって」
万葉「ふーん。そうかね」
薄雲「ぎゃふん! ぜんぜん信じられてない感じ!」
万葉「………………」
(と、そこで、狂太郎が咳払い)
狂太郎「……ええと。では次は、犯人ではないっぽい証拠が出たぼくが仕切らせてもらおうか。――他に、自分の証拠品を出せる物はいないか?」
呉羽「…………」
薄雲「うーみゅ」
グレモリー「悩み中」
ああああ「私は、最後がいいかなー」
狂太郎「では、さっとぼくの情報を話しておこう。
薄雲の部屋⇒《絹のパンツ》
グレモリーの部屋⇒《においぶくろ》(封をキツく縛ってある)
なお、人づてに聞いた追加情報として、
薄雲の部屋⇒《スキルシート》
呉羽の部屋⇒《命の指輪》」
ああああ「ふーん」
グレモリー「……なるほどね」
万葉「実に、興味深い」
(薄雲、目を丸くしてキョロキョロする)
薄雲「ん、……んんんん? にゃんか、さらっと流されたけど……狂太郎さん、私のパンツ、ずっとポッケに入れてたのかにゃ?」
狂太郎「ああ。何かの証拠品になると思ってな」
薄雲「いやいや! それなら、元の場所に戻しておいてくれたらよかったのに!」
狂太郎「実物があった方がいいだろ」
薄雲「そんにゃ馬鹿な。状況が状況でなかったら、立派な変態行為、にゃよ」
万葉「たしかに」
呉羽「それはわっちも思ってた」
ああああ「狂太郎クン、不潔だよ」
グレモリー「…………サイテー」
(今度は、狂太郎がキョロキョロする番だ)
狂太郎「……ぼくはてっきり、犯人逮捕の重要な手がかりになるかもしれないと思って、だな」
ああああ「さすがに、――それが何かの証拠になるとは思えないなあ」
狂太郎「そうか?」
ああああ「ユー、素直に言っちゃいなヨ。若い娘の下着をゲットしたかったって」
狂太郎「流石に、この状況で興奮できるほど肝は座ってないよ」
(そこで、呉羽がゆっくりと席を立ち、)
呉羽「待ちなんし。一応それ、何の証拠品でもない、とは言い切れないでござんしょ」
狂太郎「な? ほらあ!」
呉羽「我々”闇の民”はそもそも、あんまり下着を着けない種族もありんす。体毛が濃いタイプの種族は、生殖器を隠す必要、なかったりするから」
狂太郎「…………あったな。そういう世界も」
ああああ「なるほどぉ。ちなみに今回の場合は、どうやって調べれば良いかな?」
呉羽「それを知るには、――まあ、直接見るしか」
(同時に、六人の間に不穏な空気が流れる)
(薄雲、周囲の五人に、視線が集まっていることに気付いて)
薄雲「ウッソだろ。おい。まさか、みんな」
ああああ「もし、薄雲ちゃんがパンツとか履かないタイプの種族なら、――その《パンツ》、どこかから盗んだってことに、なるよね?」
グレモリー「…………本物の変態は、いったい誰だったのか……」
呉羽「ごめんね。薄雲」
狂太郎「せめてぼくは、背を向けていよう」
薄雲「え。
ちょ。
うそでしょ。
みんな。
こっちに。
こっちに来ないでよ。
ひえ。
やだ、やだ!
ふぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
(画面が暗転する)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます