第49話 調査結果と懸念点
「今日から正式な顧問ですか」
「実感はないけどね」
放課後の学校。真澄たち三人は部室に集まって学生気分に浸っていた。
「お祝いしなきゃ!」
「しなくていい。お飾り要因なのはわかってるし無報酬で引き受けてるから」
「いつも思いますが菊姫さんって常識人ですよね」
「アウトローを目指してるのに」
「秘密が多い女も目指してましたよね」
「目指すものは多ければ多いほどいい」
格言風の決め台詞に真澄はふと別のことを思い出す。
「そういえばカード化を目指す話はどうするんだ? まずは菊姫さんが魔物を倒す様子を撮影するんだったよな」
――今ならジェムリアを使って簡単に倒せるはずだ。
「ふふん、絶賛進行中よ。ひめちゃんに着てもらう衣装を頼んでるの」
「頼むってどこに?」
「七水先生が顧問の手芸部ね」
「あの人が手芸部かぁ……」
「とらちゃんは昔から手先が器用だったね」
「衣装を作るのにお金がかかると思うんだが」
「出来合いの服にアレンジを加えてもらう作り方で、多少かかる費用はわたしが出してるわよ」
「私が着るのなら自分で出す」
「いいの! ひめちゃんにはお世話になってるんだし」
「菊姫さん、ここは塩浦に任せましょう。別のところで返すこともできます」
「ふーん? 何か変なことを考えてそうだね」
「至って真面目ですよ」
真澄は神妙な顔で言うがその実、色気を押し出した衣装を密かに期待するのだった。
◇
ファイネと別行動を始めて一週間。七月に入り急に暑くなってきたので三人はうんざり気味に車に乗り込んだ。
「この車に冷房がついてて助かりました……」
「バイクって暑そうだもんね」
庭にあるダンジョンの調査結果で真澄が家に戻るかを決めるため、バイクは置いて菊姫の家を離れる。とはいえダンジョンに潜る準備は万端だった。
「師匠、大丈夫かしら」
「危険な状況に陥る姿が想像つかないんだよなぁ。菊姫さんが言ってたダンジョン関連機関への連絡は進展ありました?」
「ダンジョン管理委員会のサイトにご意見ご要望を送る場所があったから利用したけどさっぱり。いたずらと思われたのかな」
「やっぱり異世界人は未確認の存在なのかもしれませんね」
すぐに真澄の家に着いて三人は車を降りる。庭に回るとダンジョンの入り口は木の板と石でふたをされたままだった。
「とりあえず誰も外には出てないか」
「元に戻してないならね」
真澄がふたをどかせてダンジョンへ入り、菊姫と塩浦が続いた。
「あぁ……ダンジョン内は涼しくて助かる」
「夏休みになったら入り浸りたいわね」
「確かに」
先々を考えながら緊張気味に罠の元へ向かうが直前で立ち止まる。
「スケルトンになったら元に戻るまで外には……」
「万が一に備えよう」
何に対して備えるかすらわからないなか、罠を跨いで奥へ進む。
「……」
自然に口数が少なくなり小部屋へ向かうと――。
「カタカタカタカタカタ!」
懐かしい骨の響きが出迎えた。
『みなさん! お久しぶりです!』
『久しぶり』
ファイネは作業着の姿そのままで元気に挨拶をする。
『まずは無事で良かったよ』
改めてスケルトンの状態になった三人は安堵して木の板へ座り対面した。
『早速で悪いんだが一週間でわかったことは?』
『結論から言うとメティル・アルコフォールは居ない可能性が高いです』
『いる可能性もあるってことなのかな』
すかさず菊姫が聞き返すが、ファイネは少し困ったように骨を震わす。
『何か異質な気配を七階層で感じたんです。このダンジョンは九階層まであったので見て回ったのですが、その一か所だけ妙な魔力が渦巻いていました』
『原因はわからなかったのか?』
『岩が突き出した下に位置する場所で行く方法がなく確かめられませんでした』
『それはまた怪しさ満点な……』
『メティルというには反応が弱い気がしたのです』
『最終的にそこの調査が必要になると』
『その通りです』
――縄みたいな梯子を用意すれば行けるだろうか。
『手伝えることは?』
『ワタクシ一人にお任せを!』
真澄は自信満々にするファイネの仕草に若干の違和感を覚えた。
『何か懸念点がありそうだな』
『い、いえ! へっちゃらなので!』
『師匠! わたしがいれば役に立つわよ!』
『安全を確保する目的なら協力は惜しまない』
『今まで鍛えた弟子を頼ってくれ』
真澄たちに押されたファイネは肩を落として骨を震わせる。
『実はですね、魔力の消費を抑えるために魔物と戦わず逃げ回っていたんです。なのでダンジョン内に潜む魔物の位置が乱れてしまい……』
『団子状態になってる箇所があるのか』
『異質な気配は存在感があって、できる限り魔力を温存した状態で挑みたいと考えています』
――ファイネでもスケルトンの状態だと不安なんだな……。
『菊姫さん、塩浦』
真澄の呼びかけに二人は納得するように頷いた。
『俺たちにファイネのサポートをさせてくれ』
『はい、ぜひともお願いします!』
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