スクールスケート! -りょー君のぞうきんがけ戦記-

上田文字禍

VSたけし君 驚異のコンパクトぞうきん

ボクの名前は〈りょー〉4ねん3くみ。

『ぞうきんがけ』で学校1を目指す男だ。


ぞうきんがけは遊びじゃない、闘いだ!!!


ボクはぞうきんがけを『スクールスケート』と呼んでいる!

つまりボクは『スクールスケーター・りょー』だ!!!



今日の相手はガキ大将の『たけし君』

給食の時間にボクの友達『とも君』の冷凍みかんを勝手に食べた犯人だ。


ゆ゛る゛さ゛ん゛!!


「たけし君、約束を覚えているかい。ボクが勝負に勝ったら明日の給食で、キミの分のデザートをとも君にあげるんだ」


「まあいいけどよ、一体なにで勝負するんだ?今は掃除の時間だぜ?」

たけし君が腕を組む。


背が高く、体格がいい。

冬でも短パンのヤバイやつだ。



「たけし君、これで勝負だ!」

ボクはぞうきんを手に持った。


「まさか……ぞうきんがけか!?」

たけし君が驚く。


「違う!!!スクールスケートだ!!!」

ボクは強く言い放つ。


「スクールスケートォ!?……なんだそりゃぁ」

たけし君が言う。


「かんたんに言えば、ぞうきんがけだよ」


「ぞうきんがけじゃねぇか!!!」



「スクールスケートにはいろんな種目があるけど。今回は速さで勝負しよう!」

ボクは提案する。


「この3くみの教室からスタートだよ。そのまま1くみの教室を超えて、トイレまで行く。階段のところで折り返してスタート地点に戻ったらゴールだよ」

ボクはルートを指さした。


「いいぜぇ!」

たけし君が両手の拳を合わせた。

「オマエらぁ!邪魔が入らないように全部の教室と階段を見張ってくれ!!生徒や先生が飛び出してこないようになぁ!」


たけし君が指示すると、子分たちが分かれて、全ての教室の入口と階段の前に立った。


「うんうん。わかってるね!」

ボクは頷く。

「スクールスケートは安全第一。いい心がけだよ!たけし君もスクールスケーターの才能があるね」


たけし君は「おお……」と頷く。


「スクールスケート3つのきまり。

・相手のジャマはダメ!

・みんなに迷惑をかけない!

・スマートにおわらせる!

いいね?」

ボクは確認する。


「ああ。ジャマ以外はなにしてもいいんだな?」

たけし君がニヤリと笑った。


「うん、いいよ」

ボクは頷く。


たけし君はぞうきんを持つと、得意げに眉をあげた。


「たけし君……まさかそれは!」

ボクは驚いた。


たけし君は手にもったぞうきんを二回折りたたんだ!


「そうさ、ぞうきんをたたんでコンパクトにしたのさ」

たけし君が得意げに言った。


「コンパクトぞうきん……床にふれる場所を少なくすることで、すばさやさをあげる気だね!」

ボクはおでこの汗をぬぐう。


「それだけじゃねぇ。広げたぞうきんはやわらかいが、たためばぞうきんは硬くなる。安定するんだぜ!」

たけし君が言う。


「さすがアニキ!」

子分たちが言った。


「……じゃあ、始めようか?」

ボクは言った。


「オマエはやり方変えないのかぁ?」

たけし君が勝ちほこった顔をする。


「変えないよ。ボクはノーマルで行く」

ボクは冷静を保った。


この勝負、負けるわけにはいかない!!!



スタートの合図はとも君。


「ゴー・トウ・ザ・スタート!」


ボクたちはぞうきんをしぼり、位置につく。


「レディ」


ボクたちは構える。


「クリーン、GO!!!!!!」

とも君が手を叩いた。


ボクたちは一気に走り出す。



ボクとたけし君には体格差がある。

たけし君、すさまじい圧だね!


「アニキが早いぜ!!!」

子分が言う。


たしかに、たけし君がかなりリードしている!


だけど……。


次の瞬間、たけし君が手をすべらせて転んだ!


ボクはその横をすり抜けて折り返す。

そして、そのままラストスパートだ!!!


ゴォォォォォォル!!!!!!



「オレサマが……負けた……」

たけし君が呟いた。


「作戦は良かったよ。でもね、キミに合う作戦じゃなかったんだ」

ボクはそういって勝利の一しぼりをした。

バケツに汚れた水が落ちる。


「ぞうきんをコンパクトにしたら、手元が小さく収まる。するとキミの立派な体格を支えるのが不安定になるんだ」

ボクは言う。


「くそぉ!」

たけし君が悔しそうにうなった。


「それにキミはスクールスケートの初心者。基礎がないままコンパクトぞうきんは使いこなせないよ」

ボクはたけし君の肩に手をおいた。


「オレサマは何も分かってなかった……オレの負けだ」

たけし君が言った。


「アニキィ……」

子分が悲しそうに言った。


「りょー君が勝ったっ!!!」

とも君が言う。


「うぉおおおおおお!!!」

いつのまにか集まっていたギャラリーが湧く。



「こらーーー掃除は静かに!おしゃべりは禁止です!」

担任のミキ先生が現れる。


「わーすみませーん!!!」

ギャラリーが掃除に戻った。


「りょー。今回はオマエの勝ちだ。約束は守る、明日のデザートはとも君にやる」

たけし君が言った。


ボクは頷く。


「これでまた……学校1のスクールスケーターに近づいたかな」

ボクはぞうきんをきれいにたたんだ。


「スクールスケーターって一体なんなんだよ……」

たけし君が呟いた。

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