第156話 女子高生(おっさん)、夏休み突入


〈体育館〉


「──では、よい夏休みを」

「んんんっ……やったぁー!」

「アシュナ先輩がはしゃいでる……まじ可愛い……」


 終業式──校長の話が終わり、いよいよこれから夏休みが始まる。

 思わず叫んでしまった、無理もない。社会人になってから1ヶ月以上の休みなんて幻想でしか無く──どころかお盆正月にもまともに休めなかった日々が続いていたからだ。

 アシュナになったのは一年前の夏休み真ん中くらいの時期──これまでに冬休み春休みはあれど、ヒナヒナ達と遊んだり、ケン達と遊んだりでゆっくりとした休みはなかった。


 つまりは初めての超長期休暇、小説も次回作は既に推敲済みなので、まとまった休みは今回が初めて。何をしてもしなくてもいい……それこそが本当の休みというもの。

 恥も外聞もなくなったおっさんが咆哮するのも当然だった。


 さて、何をしようか。お金はたんまりあるから(小説の印税はまだ手元にないけどヤコウさんが億はあると密かに教えてくれた)……一人旅なんてのもいいかもしれない。

 友人達とは個人面談かよってくらいにぎっしり予定が詰まっているが、差し引いても一週間くらい一人の時間はあるし、どうせなら前世でしていない事をしてみようか。


 まずは初日が肝心だ、出だしが好調ならば波に乗れるというもの。確固たる決意をもって、計画を打ち出してみよう。


 1.まずは買い物、初日は色々買い漁ろう

 2.朝起きてから深夜まで前世でプレイしてないゲームをやる

 3.合間に前世で読んだことや観たことないアニメや漫画を見る

 4.前世で行ったことない場所に遊びに行ってみる。


 ふぅ、こんなものだろう。

 やはり旅行は事前準備が一番楽しいらしい、オラわくわくしてきたぞ。


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〈夏休み1日目 朝〉


-リビング-


「……おはよーお母さん……ふぁぁ眠い……」

「おはようアシュナ、今日は出かけるの?」

「うぅん……行かないめんどい……」


-アシュナの部屋-


「お姉ちゃん、その漫画……何回読んでるの?」

「いいじゃん何回読んでも、面白いんだから」


〈昼〉


「昼寝しよ~……おやすみ~」


〈夕方〉


「アシュナ嬢、そのゲーム前にやってなかった?」

「うん、何回やっても面白いんだよねー」


〈夜〉


「寝よ~おやすみ~」

「アシュナ嬢、中年じゃないんだからたまには新しいことした方がいい」


 カザカちゃんが呆れ顔で言ってたけど、やっぱ出かけるのとか面倒だし、新しいゲームとか漫画とか読む精神力無い、外れだったら嫌だしね。

 同じことを繰り返してごろごろするのが、っぱ一番っしょ。たまらんね~変わらない日常。


 これを七日間繰り返した、まるでエンドレスエイトだけど……最高の休日だった。



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