第152話 女子高生(おっさん)とプールと拓かれる世界②


〈学校 室内プール〉


 異変が起きたのは、更衣室から出て直ぐの事だった。


 予想通りというか……予定調和の如く、俺(アシュナ)のスク水姿を見た野郎共はそれだけで股関を硬くしたようで両手で前を覆っていた。

 室内プール独特の閉塞感や鼻を透き通ってゆく塩素の臭い、反響して巡り廻る水の音……反射する水面の光を映すスク水という綺麗な光景を堪能しているというのに……まったく、汚いものを視界に入れるんじゃないよと、


「また男どもが悶えてるよー……って、あれ? アシュナっち……どうしたの?」

「…………ん、わ……わかんない……なんか、身体が……」


 ミクの男子を見る呆れ顔が、俺の様子が変だと察知するやいなや一転して心配の表情に変わる。


 おっさんにもわけがわからなかった──アシュナとなって初めて感じる……お腹のあたりの、否、下腹部あたりの違和感。それは失ったロストおち●ちんのそれかと思ったが微妙に違う。まるで……この身体に備わる女性の器が反応してしまったかのような不可解な現象。


「うわー、テンマ君腹筋割れてるねー」

「ふっ、当然だ。アシュナに連れ添う者として、だらしない肉体など相応しくないからな。貴様も顔に似合わずそれなりの身体つきだな」


 そんな会話を繰り広げながら、俺の元へとやって来たアリス君とテンマを視界に入れると……それは確かな反応となって、電流のように俺の身体を駆け巡った。


「んんっ……!!」

「!?」


 二人とも、ミクも、凝視する男子達も一様に同じ反応を見せたが……その時のおっさんはそれどころではなかった。その時点で頭が理解したことと言えば……反応は間違いなく

 顔は紅潮し、身体は火照り、丹田(たんでん)の辺りがむずむずする。


 クラスの皆も先生も、誰しもが何かしらの病気を疑っていただろう。その場の全員が一瞬興奮しかけたが、すぐに俺の身体を慮(おもんばか)る挙動を見せた。


「センセー! アシュナっち体調悪そうなんで保健室つれてきますっ!」

「大丈夫アシュナっ!?」

「あぁっ! 三久たのむっ!」


 皆があたふたする中で、こういった時に頼もしい一面を見せるギャルのミクがすぐに肩を貸してくれて保健室へと運んでくれた。

 その中でおっさんだけが、経験で、直感で……この反射の正体をすぐに理解した。


 感じたくない──けど、反応しちゃう──この台詞を産み出した……かの有名で偉大なる先人にちなんで、おっさんはこの現象を『クリ●ゾン反応』と名付けた。


 決して認めたくはないものだが、間違いなく俺(アシュナ)の身体は男に反応し始めていたのだ。

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