おっさんだった俺が美少女になって高校生からやり直してみたら人生クッソチョロかった~あの時イジめてきた奴がお近づきになりたいらしいけど気持ち悪いから消えなさい~
第144話 女子高生(おっさん)とタイムリープ問題Ⅲ
第144話 女子高生(おっさん)とタイムリープ問題Ⅲ
〈東京 表参道 高級ブティック〉
「──これ、なんの騒ぎ?」
「ほら、生アシュナ様だよ!!」
「マジ!? うわっ! 思わず声出ちゃった……あんな綺麗な女の子ホントにいたんだ……肌ツヤツヤ~……」
「おい! 噂の女子高生がいるってよ!」
「ツインテールめっちゃ似合ってて可愛い!」
美容院から場所を移し──表参道に立ち並ぶ高級ブランド服の店。通りでは暇そうな若者たちが意味もなく街を練り歩く……まったく理解できない、せっかくの休日に疲れて何がしたいの? 休みは家で寝るためにあるのに……というおっさんの想いとは裏腹に、まるで芸能人でも見つかったかのような騒ぎが都会の喧騒を更に増長させていた。
ネツハさんの頼みに引っ張られるように来た我々一行はそんな衆目に晒されながら、ブランド店の中でも一際目を惹くサイバー感溢れる店に踏み込んだ。ガラス張りであるために外には人だかりが途切れない。
「お嬢、店のオーナーに話をつけて俺が一般人の入店制限を行います」
「警察も手配して退去させますわ、アシュナはわたくしらに構わず……究極の美を完成させてくださいませ!」
めらぎとコクウさんが、『ここは任せて先に行け』的な感じで野次馬整理に飛び出した。別に俺がお洒落したくて服屋に来たわけじゃないんだけど……『いつもと違う感じのアシュナも見たい』という二人からの押し寄せる期待を感じるので仕方なく付き合う事にした。
初音ムクッちゃん(俺)を完全体に仕上げるため、ネツハさんは店内にある高そうな服を片っぱしから物色していた──そこへ、奥からモデル歩きをした店員らしき人が近寄ってくる。
「ネツハ、その子が……?」
「ぁ……キセキちゃん……」
「……ふ~ん、あんたがアシュナ……確かにモデルとしては申し分ないね……ていうかこんな美人、よく今まで世に出てこなかったわね……」
「あ……あの、なんの話……? どなたですか?」
「よろしく、二三四(ふみよ)から聞いてない? あたしが貴女の専属スタイリストの【吉瀬ヶ崎 輝汐(キセキ)】よ。初めまして波澄アシュナさん」
「キセキちゃんは自分でモデル業やりながらスタイリストとかもやってて……この店もキセキちゃんが立ち上げたブランド店なんですよ」
なるほど、どうりでスタイリッシュで綺麗なお姉さんなわけだと納得する。
「はぁ~……でも、自信なくすわね。こんなの磨けばすぐに頂点にも輝ける原石じゃない……その分、研磨する意欲がとても湧くけれど。それで、ネツハ……キャラクターは出来上がったの?」
「うん……けど、服のイメージが出来ないから……アシュナさんに色々着てもらおうと思って」
「そこはあたしに任せなさい。コンセプトはミライのアイドル……アンドロイドだからサイバー感を出しつつ……そうね、アシュナさんは女子高生で小説家……オタク層を取り入れつつも一般女子高生の制服ぽさも出してみましょうか」
二人の美女に視姦されながら、なにかの話は勝手に進んでいく。一体なんの話か聞いたところ──ネツハさんとキセキさんが放った言葉におっさんの脳は混乱の一途を極めた。
「ネツハがイラストレーターなのは聞いたでしょ?今ちょうどあるプロジェクトが進行しててね……そのキャラクター原案をネツハは任されているのよ」
「?」
「あ……そうなんです……極秘なんですけど、アシュナさんにだけは教えますね……ある会社が声を使った電子楽器……ボーカル+シンセサイザーで【ボーカライザー】というシステムを売り出そうとしてて……」
「??」
「同時にその声を当てる仮想アイドルを売り出すっていう計画なの。ネツハはその仮想アイドルのキャラクターを産み出すのに悩んでたのよ。けど、貴女がモデルになってくれて上手くいきそうね……さ、早速着替えて頂戴」
それ、ボカロじゃん。つまり【初音ムクッ】ちゃんの産みの親って……この二人!?
そして、初音ムクッちゃんのモデルがつまり……おっさんってこと? あれ? でもじゃあおっさんが知ってる初音ムクッちゃんは誰がモデルなの? これ……タイムパラドックス的なやつ?
「人払いは済みましたわ、さぁ存分に着替えてよろしくてよアシュナ」
「俺の方も済みました」
問題を片付けわくわくしながら戻ってきた二人と、今から歴史的キャラクターを産み出そうと躍起になっている二人とは対称的に──おっさんだけがこのままこのイベントを進めちゃっていいのかという新たな問題に直面していた。
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