第127話 女子高生(おっさん)の修学旅行~③日目『アメリカンヴィレッジ』


〈AM11:00 アメリカンヴィレッジ〉


「さぁっ、あっそぶぞー!!」


 まだ6月なのに馬鹿みたいに照りつける太陽、コバルトブルーのコバルトってなんなのって感じのコバルトブルーの澄みきった海、水着の日焼け跡のおっぱいはより興奮するよねって感じの白い砂浜、筋●ハウスじゃないんだからって感じの色彩溢れる建造物の羅列、遊園地……まさにここはアメリカン。

 おっさん達三日目のグループは那覇市からバスで約一時間かけて、沖縄にあるアメリカンなパーク……アメリカンヴィレッジへとやって来ていた。元気溌剌なヒナヒナの可愛い声がアメリカンな地に響き渡る。


 ここに来たいと言い出したのは、ご存知〈陽キャの化身【三女傑】〉である。男子メンバーは女子に一切意見出来ないケンら部活メンバーであったため、当然、即決してしまった。

 おっさんは、沖縄なのになんでアメリカン村に来なきゃならんのと疑問を抱いたりしたが……おっさんの地元にも千葉でありながら東京であるドイツの村が観光スポットになってたりするので致し方ないと納得する。別に観光なんてどこでも構わないし。


「どうかした? アシュナなんか元気なさそう……」

「……気にしないで……ちょっと寝不足なだけ……」

「? アンタ寝てなかったの?」


 寝たフリをしてこっそり部屋を抜け出していたなど知らない同部屋のヤソラが不思議そうに俺を見た。そう、【転生九萬宮】から戻ったのは明け方であったため……おっさんは全然寝ていないのだった。そうなると陰であるおっさんはどうなるか──普段の世界を憎む心構えの反動からか【卑屈 無気力 苛立ち】に感情が支配されてしまうのだ。

 身体はパーフェクトボディに加え、自浄作用(オートメーション)機能まで備わったのだが……精神(おっさん)に関わる疲労や焦燥感の問題だけは如何ともしようがない。


「HAHA! oh! perfectgirl(パーフェクトガール)Don't you go out to play(俺らと遊ばない)?」

「……は? なに言ってるかわかんない……get out(失せろ)!」


 陽気な外国人に声をかけられたが、英語わかんないし、なんでアメリカンな地にアメリカンがいるんだよ……日本人が海外行って似非『日本の村』を観光するようなもんだろ馬鹿か、という思いで一蹴した。

 外国人はドMだったのか嬉しそうにして陽気に離れていった。


「アシュナ殿の機嫌が悪いでござるよタケル殿イオリ殿……なにかあったのでござろうか……」

「わ……わかんない……」

「……アシュナ、もしかして生理なのか?」

「ぶっ飛ばすよ?」


 エロ猿のタケルにデリカシー0な事を言われ、ますます苛立ちが募る。陽キャじゃあるまいしオールする事に慣れていないおっさんはまさに触れる者みな傷つけるナイフと化していた。


(失敗したなー……神様と話し過ぎたか……少しだけでも寝れば良かった……)


 そんな時、またもや外国人の集団に声をかけられた。何を言ってるのかわからないが……今度は一向に退こうとしない。

 タトゥーとか入ってるし絶対向こうの国のDQNだと(※偏見)思い、女子組を守るように前へ出る。


「あああアシュナどどど殿にちちち近ぢゅくなでごごござるよ!! タケル殿イオリ殿防衛隊の出動でごじゃる!!」


 ケン達が俺を守るように更に前へ出た、はっきり言って悪いけど……全く頼りになりそうにない。

 今日はテンマもいないし……コクウ君も昨夜付き合わせたから緊急時に備えての待機休みにしてもらったので……このままじゃ負け戦確定だった。


「HEY.What happened?(どうかしたのか)」


 その時──透き通るようなイケボ声の主が近づいてきた。見ると、ハリウッド俳優のような王子様系イケメンだ。彼は立ちはだかるようにして外人達へと相対した。


「■○△※%▲マイコー△※○○▲!!?」

「▲○※※▲○!!」


 外国人DQN達はそのハリウッドイケメンを見て、なにか言いながら一目散に退散した。DQN達の方が明らかに体格も身長もデカかったのに心底ビビっていた様子だった。

 そんな光景に唖然としていると、ハリウッドイケメンはセミロングの長髪をかきあげて『まげ』みたいにして結び……カタコトの日本語で俺の手を握って言った。


「ダイジョブかい? マイハニー……俺は『星乃・マイケル』、親しみを込めて【マイコー】って呼んでくれ」




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