第120話 女子高生(おっさん)の修学旅行~②日目『料亭にて』~


〈PM12:30 国際通り〉


 ヤソラに多大なる且つとても複雑な誤解を受けたまま……班行動はビーチから……様々な人で賑わう国際通りでのショッピングへと場所を移した。


「──ねぇ、ところで今まで誰にも言わなかったのに何であたしには話してくれたの?」

「……だって納得しなさそうだったし……これ以上俺に変絡みしてたらヤソラがまた孤立するかと思って」

「……あたしの心配してくれたんだ………ありがと……」


 遂にデレてくれたし……おっさんを『心は男』とわかって尚──というか前より心を開いてくれて呼び捨てにしていいとまで言ってくれたヤソラにおチン●ンの幻肢痛を感じながら、昼食にするため那覇で有名な懐石料理店に入る。

 隠れ家的に通りから少し離れた場所にあったこのお店は、ミク達と事前に下調べして決めていた……学生には敷居が高いが評判のお店。佇まいからして官僚がランチにでも来店しそうな雰囲気を醸し出す。

 正直、昼飯なんて何処でもよかったが……臨時収入(二千万)があるので女子達にいい物を食べさせたいと思って評判も良く高いお店に決めたのだった。


「せっかく大金持ちのテンマっちもいることだしね~高いお店にしよーっていう事で、ごちになりま~す」

「ふざけるな、俺が奢るのはアシュナにのみだ」

「わ~っ、綺麗なお店だねぇ。僕アシュナちゃんの隣に座ろー」


 各々が好き勝手に迷惑に騒ぐ……が、従業員は出てこない。と、いうか……テーブル席にもカウンター席にも客すら一人としていない。

 だが、奥には個室もあるようでそこからは音がする……と感じた瞬間に慌てた様子で従業員らしき女の子がこちらへ向かってきた。


「わっさいびーんっ! 札んじゃするぬわしとーいびたんちゅーやいちゅたー貸し切りっしぐあんねーならんさぁ!」


 女子大生くらいの可愛い従業員さんは、何か焦った様子で俺達に何度も頭を下げながら宇宙人みたいな言語を放った。琉球弁というやつだろうか? 全く意味がわからないが……方言女子も乙なものだな、としみじみ思った。


「アシュナ、『今日は貸し切りで案内できない』と言っている」

「テンマ、琉球弁わかるの?」

「当然だ、最低5ヶ国以上の言語をマスターするのが鳳凰家当主たる資格だからな」


 琉球弁は5ヶ国語にカウントされるの? という当然の疑問を他所に、それを聞いて落胆するミク達を見て本当に申し訳なさそうに従業員さんは謝った。


「仕方ないよ、別のところを捜そ?」

「おおっ!? すげぇ可愛い姉ちゃんがいるじゃねえか! ちょっとこっち来て座れよ!」


 すると、俺がミクを嗜(たしな)めると同時に個室から品の無さそうな喋り方のでかい声が飛んできた。顔を覗かせた声の主達は……明らかにスジ者といった面々。スキンヘッド、顔に入れ墨、目に切り傷……間違いなくヤクザ。ヤクザ達の眼はあからさまに俺達の方を向いていた。


「あぬ、くちらぬ不手際なんでぃゆすぬうちゃくさぬんかいちょっかいんじゃすしぇー……」

「じゃかぁっしい! 俺らはそこの女に言うとんじゃ!」


 何を言っているのかわからないが、恐らく止めようとしてくれた従業員さんをヤクザは怒鳴りつけた。

 歳を重ね、年下のDQNやチンピラは以前より怖くなくなったおっさんと言えども流石にヤクザは恐ろしくて尻込みする──が、萎縮(いしゅく)してしまった従業員さんを見て、一言物申すために足を踏み出す。


「こっ……このっ──」

「お嬢、お任せを」


 その瞬間──黒い何かが横を通り抜けたと感じたと同時に……………床にドタドタと人が倒れていく音が聞こえた。

 何を言っているかわからねーと思うが、    


「終わりました」


 と、お馴染みのパロディをやっているとその正体は直ぐに判明する。SPの【漆夜黒雨】がヤクザ達を一瞬で制圧した音だった。

 私のSP強すぎっ!?

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