第20話 女子高生(おっさん)と女子達と学年主任②


「ん~? なんだぁ? 1年C組【波澄アシュナ】。お前もなにか文句があるのかぁ~? ふひひ」


 標的を俺(アシュナ)に移したガハラが今度はこちらに近寄る。自分を喰い物にせんと近づいてくるその様はまるで怪物ーー女子目線から見ると嫌悪と恐怖しかない。

 これじゃあ男嫌いだったり、男を忌避する女性がいるのも頷(うなず)けるかもしれない。


 しかし、身体は女でも、俺『も』ただのおっさんだ。前世(?)では工場で働いていたからこの手のおっさんは同僚として嫌というほどに見てきた、傍にいようが何も感じない。


 油ぎったニヤケ顔がすぐ目の前に来る、これは強敵だ。このおっさんーーどうやら、女性が嫌がるであろうことも『込み』で反応を楽しんでるみたいだ。その無神経さには脱帽する。


 仕方なく、前世(?)で得た【切り札】を使おうと試みたその時ーー変な臭いが鼻を通り抜ける。

 瞬間、口をついて言葉が勝手に飛び出した。


「くさっ!!? うわぁ懐かしい! 工場で嗅ぐ切削油の臭いだ! 臭いって言われてるけど私この臭い好きなんですよね~」

「「「「!!!!?」」」」


 周囲は驚き、ガハラは唖然とした。

 俺、またなんかやっちゃいました? な空気を感じたので急いで取り繕う。

 のちのちを考えてこのおっさんは味方につけなくてはならないのだ。


 「あ……でも、体に害があるかもしれないし無闇に人に嗅がせない方がいいですよ? 私は大丈夫ですけどねっ!! さすが先生っ! 有毒レベルの体臭を出せる人なんて中々いないですよ!」


 周囲はクスクスと笑い、ガハラは涙目になり真っ赤になる。その様はまるで便秘のオークだ。


「ーーあはははっ! さすがアシュナ! 行こっ! アシュナに臭い移ったら困るしね!」


 ヒメが俺におっぱいを押し付けて腕に絡まり、手を引く。他の生徒達も連れてガハラを敬遠しながら通り過ぎていく。

 テンパるといらん事すら口に出してしまうおっさんの悪い癖が爆発した結果だったが、生徒からは口々に称賛の言葉を頂いた


 

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