第19話 女子高生(おっさん)と女子達と学年主任


「ふーっ……ふーっ……ふひひ……」

「うわ……またいるよ【ガハラ】の奴……マジきもい……」

 

 登校時、通学路でヒナヒナグループと一緒になり、話ながら正門をくぐると……そこには学年主任の【高原ガハラ】がいた。

 タイムリープする前の俺より少し上くらいだったはず(興味無いので覚えてない)のおっさんは、控え目にいってもデブで、更にすだれハゲの役満リーチ主任だ。今日も油ぎった顔で女子生徒達をいやらしい目付きで見ている。

 その挙動に風貌も相まって女子生徒からは大層不人気である。

 女子生徒と気の弱そうな男にだけは強気で、セクハラまがいな生活指導をしているというのを男時代に何度も噂で耳にした。学年主任の立場を笠に着せて、指導室でやりたい放題やっているらしい。


 間違いなく誠実とは言い難い教師であるのは明白であり、どんな悪口を言われていようが、味方する気も同情する気も起きはしない。

 たとえ、タイムリープする前の自分が同類のおっさんであったとしても。いや、それ故の同族嫌悪かもしれない。一応言っておくが、俺は女性にセクハラをした事はないぞ。


「しつこく標的にされてる子もいるってハナシだけど悔しいけど証拠ないし……キモいからあんま近寄りたくないしね。さっさと行こう。あんなの見てる価値もないよ」


 ヒナヒナグループの一人【姫廻陽女(ひめぐりひめ)】がゴミを見る眼でガハラを敬遠する。ヒナヒナグループの中では〈陽菜(ヒナ)、陽葵(ヒマリ)、陽女(ヒメ)で真の陽キャ三女傑と勝手に命名〉可愛い顔してけっこう毒づくタイプ。

 まるでおっさんの自分に言われているようで、少し興奮した。


「おぉ~ぅ……? 1年C組【姫廻陽女】。何だその眼はぁ~? ずいぶん生意気じゃないか……ふーっ……ふーっ……ふひひっ」

「は? ……いえ、そんなつもりは……」


 ガハラがヒメに目をつけて詰め寄ってくる。まるでエルフを見つけたオークだ。ヒメは目線を逸らし、威圧しながら近寄るガハラから顔を背ける。

 いくら強気な性格だとしても、目上の男性にずかずかと詰め寄られれば恐怖だろう。たぶんそーいう事をわかってガハラはやっている。


 大人のやる事じゃない、いくらスケベなおっさんだろうと節度と分別くらいは弁えるべきだ。

 俺はヒメを庇うように、ガハラの前に割って入った。


                   〈続く〉

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