君の名前を呼ぶことをためらう

ほんとはいつもためらっている

暖かな君の眼差しが痛いんだ

肌に食い込んで離れない


屋上で君は笑った

獣みたいに弁当を掻っ込んだ

なにかの拍子に恋心が胸から零れ落ちるのが怖かった

君は水の向こうでVサインを出していた


ずっと友達でいようなと誓い合った

かつての日々を懐かしく思い出す

青春は過ぎ去っていないのにもう思い出のようで

僕らは長い走馬灯を見ているのかもしれなかった


女子のスカートが揺れる

俺はそれを背景に君の横顔を見ている

君は好みの女の子の話をしていて

俺は複雑な気持ちで相槌を打つ


一生秘めていくことを決めた恋心を

どうか君だけは気づかないで

ほんとはさ ほんとは少しだけ、バレたい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る