恋
薄橙の光が君の手の甲に零れて、それで僕は晴れ間を知った。
好きな女優の仕草について熱弁する君の舌を噛み切りたいと目の前の友人が思っているなんて君はつゆとも思わないだろうから、代わりに思いきり頭を撫でてやる。
子ども扱いされるのを嫌がる君はかわいいよ。
金網ごしに広い世界が見える。
突然立ち上がって、眼下の運動場に向かって両手を広げ、朗々と君に想いを告げる、その時が来るのは地球最後の瞬間だと決めている。
あいつの頬にオレンジ色の光が広がって、俺は日が落ち始めていることを知った。
平常を装った俺が好きな女優についてペラペラと喋っているとあいつの顔が翳っていって、俺は唐突に自分の舌を千切りたくなる。
ガシガシ頭を撫でられて、泣きそうになったから俯いて嫌がる素振りを見せた。
金網の向こうにはでろんとした昼休みが横たわっている。
知ってるよ、お前に勇気がないこと。
分かってる、俺は卑怯者だってこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます