薄橙の光が君の手の甲に零れて、それで僕は晴れ間を知った。

好きな女優の仕草について熱弁する君の舌を噛み切りたいと目の前の友人が思っているなんて君はつゆとも思わないだろうから、代わりに思いきり頭を撫でてやる。

子ども扱いされるのを嫌がる君はかわいいよ。

金網ごしに広い世界が見える。

突然立ち上がって、眼下の運動場に向かって両手を広げ、朗々と君に想いを告げる、その時が来るのは地球最後の瞬間だと決めている。


あいつの頬にオレンジ色の光が広がって、俺は日が落ち始めていることを知った。

平常を装った俺が好きな女優についてペラペラと喋っているとあいつの顔が翳っていって、俺は唐突に自分の舌を千切りたくなる。

ガシガシ頭を撫でられて、泣きそうになったから俯いて嫌がる素振りを見せた。

金網の向こうにはでろんとした昼休みが横たわっている。

知ってるよ、お前に勇気がないこと。

分かってる、俺は卑怯者だってこと。

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