春ノ詩

僕は君のことが好きなのかもしれない、好きだったのかもしれない、薄桃色の桜の木の下で卒業証書の筒を持って微笑む君、長い黒髪が春風と遊んで、君はどうしようもなく春に愛されている。


君は私を見ている、君は卒業証書をだらんと持ってぼんやりつっ立ちながら私に見とれている、薄桃色の桜が舞う。ここは終着点、私達の長いながい命のすれ違いが終わるところ。


桜は知っていた、彼らが出会いと別れを繰り返していること、今日の空気は神様の計らいで一段と澄んでいること、春風が少し吹いたあと、少年と少女は花びらが滑っていく坂道を一緒に下っていくこと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る