プール掃除

プール掃除をしている

この世に一度も悲しみを感じたことがなく、喜びだけを感じ取る人がいるとして、その人は周囲にどういう影響を与えるのだろうかと思う

嫌悪、畏怖、怒り、理解できないことから発せられる他人の負の感情に対しても、その人はびくともしない、ただ微笑んでいる

水しぶき、

人は理解できないものを排除しようとするだろうか

磔刑に処せられたあの人は、だから殺されてしまったのだろうか

波紋の音

この世は神工的に作られたゲーム世界だとおもわなければ僕らは正気を保てないはずなのに、「死んだらおしまい」で平気に生きているあの人は毎日何を考えて生きているんだろう

カルキの匂い

いつも笑顔のあの人にも自我が備わってる

じゃあ自我ってなんの意味も持たない言葉だよな

死で一瞬で泡立って溶ける融けるとけるひとつになる、そして脳のしわが見せかけの個性を造っていたことを知る、のであればいいのに

ホースから放たれる清さ

だいたい主体性なんて獲得したら終わりじゃないか?どこまでも受動的であったのが僕らだろう、受動を極めると生きるのが楽になるんだきっと……

蛇口を締めるきぅ、という音


終わった。無駄にきれいになった。

みんな喜ぶといいな。

にんまりと上がった口角を自覚して、己の単純さに嫌気がさす

丸い夕暮れ

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