造形

悪意に慣れたくないと子どもの頃に決めたから今でも簡単に絶望するし、でも次の瞬間には忘れる、忘却は私にとって防御であり復讐であり世間を渡るためのスキー板だった。

憎しみで瞳を曇らせた君の前髪を春風が撫でていくよ。

なめられないように胸を薔薇で彩った道化師は、それでも笑い者になったけれど、薔薇は精一杯瑞々しさを保とうとしていた。

「いい子にしてるから愛をちょうだい」が叶えられない世界ではあるけれど、泣いている君の指先は実は世界一綺麗に造形されている。

愛は光だけじゃない、闇だって神様に創られているんだから、どこにいようと愛からは逃れられない、そのことを祝福と呼んでいい。

(君の躰をおしつつむ、哀しみ)

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