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三人は、洋たちの視界から消えていった。
美樹が言った。
「行かせていいの? なぜ浩一を殺さなかったの?」
洋の答えは穏やかだった。
「これが一番いい解決方法だから」
「また来たらどうするの⁉」
「その時は、殺人犯として警察が捕らえる。三枝は、近田大介とその娘を殺した犯人として、これから指名手配される」
「なんですって?」
「僕らがうまく警察を騙せれば、だ。だから、協力してほしい」
洋は心の中で付け加えた。
〝完璧だ。これで美樹は共犯者だ。一生僕を裏切れない。何があろうと〟
「殺したほうが確実だったのに」
「人殺しは引き合わない。常識だろう?」
「私は死ぬより辛い思いをしてきたのよ」
「それでも殺せば、刑務所だ。君だって、無傷ではいられない。ワイドショーのネタにされたいか?」
美樹はすねたように口を尖らせた。
「幸子は? また現われたりしないの?」
「彼らは今から死人になる。浩一に殺された死人に、ね。姿を見せるのは、自分の墓穴を掘るようなものだ」
「でも私、恐い。幸子にいきなり殴られたのよ。気づいたら、ここに監禁されていた。殺されるかと思ったんだから……」
洋は美樹を見つめた。
「幸子に殴られた? 間違いないのか?」
「最初は薬で頭がボーとして、良く分からなかったけど。でも、必死で思い出そうとしたの。落ち着いてきたら、だんだん記憶がはっきりしてきた。幸子、まるで人が変わったみたいに私に殴りかかってきたの。あれって、二重人格っていう病気じゃない? 怖い……」
洋は小さく息をのんだ。
「じゃあ、やっぱり三枝も幸子に殴られたのか……? あっ……だからあのオヤジ、慌てて三枝を撃ったのか。幸子のことをしゃべろうとしたから……。やっぱりあいつ、僕が考えていたとおりの男だったんだ……。大した嘘つきだな。最後のどんでん返しは、僕を安心させるためのでまかせか……」
美樹がきょとんとした目で問う。
「なんの事?」
洋はわずかに肩をすくめた。
〝だが、結果は同じだな。ナイフさえ隠せば、あいつが流した血が三枝に殺された証拠にもなる。物事は収まるべき場所に収まる、か〟
「ま、そのうちゆっくり教えるよ。僕の夢が全てかなった時にでも」
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