Summer・Chair・Survive

かさごさか

第1話

「ねー、これめっちゃ懐かしくない?」

 サワが鞄から取り出したのは薄いアルバムであった。茶色い紙に洒落た装飾が施された表紙。

「何だっけ、それ」

「小学校ん時に作ったやつー」

「うわっ俺若い」

「あーホントだ」

 これはサワの家に遊びに行った時、これはナナのお父さんが連れて行ってくれたキャンプ、ワタルが縄跳びに絡まって大事になったやつ等、小学生時代を思い返しながらタイチは店員を呼ぶ。人数分のドリンクバーとフライドポテトを二皿頼んだ。

「んでさ、ちょっとこのページ見て欲しいんだ」

 そう言ってサワが何ページかアルバムをめくる。可愛らしいシールとカラーペンで賑やかな見開き一ページ。その中の一枚を指さす。

「この写真見て」

 当時、サワがハマっていたチェキにはタイチとワタルとナナが寄り添って写っていた――― はずだった。

 サワ以外の三人が頭を寄せ合ってアルバムを見る。

 問題の一枚にはタイチとワタルの間にヒト一人分のスペースが空いていた。

「この時ってタイチとワタル喧嘩してた?」

「だとしたら俺もタイチもこんな笑顔してねぇよ」

「トリック写真に挑戦したとか?」

「トリック要素どこだよ」

 ナナとワタルがあーだこーだ言い合っている、どの意見も腑に落ちないといった表情でサワはアルバムが閉じないように押さえ続けていた。


 ファミレスの奥のボックス席で四人の男女が一冊のアルバムを広げて眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る