第2話 とりあえずダンジョンに潜ります
突然ギルドを追放されたミストは、呆然としながら街をとぼとぼ歩いていた。
「とりあえず、クエストには行かないとな」
少し考えミストは呟く。
食事も、宿の宿泊費も、何をするにしてもお金は必要だ。
ショックだからと言って何も行動しないと、後の自分が後悔する。
むしろ、何のしがらみもない状態で新たなスタートを切るのも悪くない。
「――前向きに、前向きに!」
少し気持ちが軽くなったミストは、その足でクエスト紹介ギルドに向かった。
「おはようございます、ミストさんお一人なんて珍しいですね」
「実は、さっき冒険者ギルドをクビになったんです」
「ええっ!? ミストさんがクビですか!?」
「はい、だから今日からソロで活動します」
受付のお姉さんは目を見開く。
「あそこのギルド、一体何考えてるんですか!? Aランクパーティが出来たのもミストさんが入ってからですよね? ミストさんがスキルで即座に罠を解除してモンスターと戦いやすくしていたからこそ到達したって言うのに!」
「何度も言ったんですけど、結局分かってもらえませんでした……リーダーを助けようとしてモンスターに罠を仕掛けたら逆に『仕事をサボった』って言われちゃって、それが決め手になったんです。はは……」
「確かショーワルって人がリーダーでしたよね? ミストさんのスキルを説明したのにまだ信じてなかったなんて……これは私の責任です、申し訳ございません」
受付のお姉さんは頭を下げる。
「そんな……良いんですよ! 俺、気持ち入れ替えて今日から再スタートします!」
ミストは鼻息荒く答える。
「ミストさん……分かりました、私も全力でサポートさせていただきます! そうなると、最初はFランククエストからのスタートになります」
ソロの冒険者として認められるには、一定の力量があるかどうか見定めるべく、紹介ギルドが提示したクエストを、試験代わりにクリアする必要がある。
例え今までパーティーで活動していたとしても、それは変わらない。
試験だけあってそこまで難易度の高いクエストという訳ではなく、最低ランクのFランクから選ばれる。
それをクリアして冒険者の肩書きを得て、少しずつ上のランクのクエストをこなしていくことで冒険者ランクを上げていくのだ。
「ミストさんは『討伐』『採取』『獲得』のどちらのクエストになさいますか?」
クエストは大きく分けて3種類、自身の職に合わせて得意な物を選択出来る。
「――『獲得』でお願いします」
ミストは即答する。
お姉さんは分かってました、と言わんばかりに笑顔を浮かべる。
「それでは……ここにしましょう。最近この街から遠くない山岳エリアに遺跡型のダンジョンが出現したんです。低級モンスターしか確認されていないのでFランクで設定されてます。地下3階以降の宝箱から出てくる『水のペンダントの獲得』が今回のクエストです」
「ありがとうございます!」
ミストは元気よく返事をする。
「それと、今日ミストさんと同じダンジョンにクエストとして向かった女の子がいるんですけど……その子、最近冒険者になったばかりなんです。もし何かあったらフォローをお願い出来ますか?」
つまり、その子もソロってことか……。
いくらFランクダンジョンと言っても、女の子1人は少し心配だ、とミストは考える。
「分かりました、もし危険だと思ったら迷わずサポートします」
「ありがとうございます! ミストさんになら安心してお願い出来ます……!」
ミストはお姉さんから、遺跡までの道のりが記された地図を受け取る。
「それじゃ行ってきます!」
「お気を付けて、ミストさんの新たなスタートを応援します!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
街を出発して20分、
ミストは遺跡のダンジョンに到着した。
「よし、頑張るぞ!」
地下に続く階段を降りると、ミストは大きな部屋に出た。
モンスター1匹いない、石造りの空間。
ミストは自身のスキルを起動させる。
「――【罠探知】起動」
ミストの視界に限り、部屋がマス目に区切られる。
外周の横壁にはアルファベット、縦壁には数字が刻まれる。
==========
――【DANGER】罠を探知しました!
D4:底無し沼の罠 ☆
F6:電磁網の罠 ☆
==========
「D4には底無し沼の罠、F6には電磁網の罠、か」
ミストが言ったアルファベットと数字が交差したマス目が赤く光る。
【罠探知】はその名の通り、地面に仕掛けられた罠を視覚化出来るのだ。
横の☆はその罠の危険度を表し、最大は☆5まである。
「よし、続けて【罠解除】起動!」
ミストの宣言と共に、赤いマスが激しく点滅する。
==========
――【DISABLE】罠を解除しました!
D4:底無し沼の罠 ☆ →解除!
F6:電磁網の罠 ☆ →解除!
==========
点滅は止み、周りのマスと同じになった。
ミストはさっきまで赤く光っていたマスを数回踏む。
ふみふみ。
何の変化も起きない、罠は綺麗さっぱり無くなった証拠だ。
【罠解除】は視覚化した罠を無条件で解除してしまうスキル。
如何なる罠も、ミストには通用しない。
「よし、今日も絶好調だ……!」
確かな手応えを感じながら、ミストはダンジョンを歩いて行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。