サキュバス魔美異シリーズ①『母親』
夢美瑠瑠
サキュバス魔美異シリーズ①『母親』
(これは、2019年の「母親の日」にアメブロに投稿したものです)
掌編小説・『母親』
女性の「夢魔」で、ファンタジックなゲームではおなじみの、「サッキュバス」の魔美異(まみい)が懐胎した。
淫蕩で、放埓な恋愛の遍歴をトレードマークにしているような、夢魔の女のことだから、誰が父親だかよく分からない。ここ三ヶ月で、ざっと三十人の違ったオトコと寝ていて、そのうちの20人くらいとは、酔っ払っていてヒニンしていなかった。どうせ夢魔のことで、相当におかしな怪物めいた種族、オークキングやらアークデーモンとか、そういういかにもオンナを孕(はら)ませそうなオトコとも、寝てしまっているのですが、いざ父親が誰だろうかというと、これはもう生まれてみないと分からない。
複数の同じ種族の悪魔やら怪物やら魔王とか、そうしたモンスターたちと情事を重ねてきているので、真実は迷宮入りになりそうなのである・・・まあもともと主な棲息地はゲーム内の迷宮、ダンジョンなのですが・・・
堕胎とか掻把?ということも視野に入れて、人魚姫に足を与えたいわくつきの魔女の子孫だという、由緒正しい血統の魔女のジョリーヌのよろず相談所に相談をした。
「どういうご相談ですか?えーっと・・・妊娠したけどお父さんが分からない?」
「そうなんです。私はちょっと淫乱気味なんでーw で、父なし子の母親になるというのもいやなんですけど、妊娠をしたのは初めてなので、子供を産んでみたいんです。
まだ17歳なので、お母さんになるのは不安ですが、何だったら里子に出してもいいし、自分に似ている子供というのがどんな風に可愛いのかとかに興味があるんです。大丈夫でしょうか?・・・」
「本人の希望を尊重しますから・・・まあ母親になるのもいい人生体験よね。
父親が誰か分からないのは不安だけど・・・今はDNA鑑定というのもあるから、
アイデンティファイは可能ですよ。父親は何人かのうちに特定可能かしら?」
「オークメイジの豚男さんかーヴァンパイアロードのベニーマさんか・・・
レイゲンドウシのほんこんさん、かな、と?何となくわかるんですけど」
「あーそこまで特定できていたら・・・養育費とか慰謝料も請求可能ですよね。
父親であることが法律的に証明されれば、あとは裁判所とか弁護士が調停してくれます。大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。相談してよかったなー とにかく臨月まで身体を大事にして様子を見ますから・・・」
で、8か月後に、めでたくおめでたの運びとなった。
オークキングの豚男さんの子供らしくて、イボイノシシそっくりの新生児が誕生した。
豚男さんは認知を渋ったが、DNA鑑定の結果を突き付けられると、逃げられなくなった。
醜くはあっても、だけど夢魔の魔美異の子供だけあって、「非愛児」と名付けられた子供には、すごいESPがあったのです・・・
夢魔というのは、魔力を使って、人間に悪夢や性夢を見せて、エクスタシーにさせて、エッセンス、エキスを吸い取るという悪魔の種族なわけですが、「非愛児」の、特殊能力は、この母親の魔美異の、人間をたぶらかすという蠱惑的な能力の、特殊なパワーアップができることで,その悪夢、性夢を正夢にして、かなりリアルに実現できるようにするという、かなりに特異で、夢魔というファンタジックな種族とオークという戦士的なタイプの悪魔の個性がミックスされた落とし子には相応しい能力だった。
性体験というのは人間関係のバリエーションの延長だから物理的には実現の可能なファンタジーが多いわけで、そういう心理的な条件やら場面やらを整える、お膳立てするという、そういうマジックを、「非愛児」は母親の魔美異を通じて人間に及ぼせるのだった・・・
悪夢のシナリオはだいたいが魔美異のいたずらっけと憑りつかれた人間の隠された願望のミックスで、それだけでも本人にとっては危険な香りのする、冒涜的で背徳的な「罪深い夢」なわけだが、それが実現されるとなると、かなりインプレッシヴで目くるめくようなすごい体験になる・・・
そうしたスキーマ全体は、魔美異と非愛児の錯雑してアンビバレントな関係と存在様式の、魔術を通しての図式化かもしれず、淫蕩な母親の放埓な性欲というものに運命的に結びつけられた、そういう不幸な?生い立ちがアイロニカルにその特殊な魔力として、発現した・・・そういう一種の「因果噺」になるのかもしれない。
・・・ ・・・
で、そういう夢魔の標的となった、うら若い乙女が野獣のような男にレイプされたり、男色願望のあるマゾっぽい男がむくつけき男たちに拉致されて掘られてしまったりw、レスボス島のサッフォーが女達に輪姦されるとか、そういう歴史をまたいだ夢魔の魔美異のいたずらが、非愛児という魔力の増幅器を得て、次々と実現してしまい、何だか困ったことになってきた。
魔美異は、基本的に気まぐれな小妖精で、モラルなどとは無縁で、息子のそういう能力が面白くて仕方なくて、罪悪感などはひとかけらも持っていなかった。
こういう文字通りの小悪魔めいた存在は、何なら世界が滅ぶようなことでも、その時に自分が愉快なら、「馬鹿な人間ども」を嘲笑しつつやってしまうものなのだ。
・・・ ・・・
「罪の子」の、自らの運命にあだするような、母子の戯れは次のような帰結で、
解決した。
魔美異が、いつものようにある若い男の夢枕に立っていると、なんとその男は、超マザコンで、その上にニンフォマニアで、妖精のような妖艶な悪魔的な魔女っぽい存在の母親がいればいいのに、そうしてその母親を犯したいのにーという、複雑で突飛な近親ナントカの妄想の願望を抱いているオタクの男だったのだ!
あまり深く考えずに魔美異はその男の精液を吸い取ろうとしたが、何ということでしょう、背中に背負っている乳飲み子の息子の魔力のせいでそのオタク男の願望が実現してしまったのだ!
「おおー!すごい色っぽい魔女が夢枕に立ったー!なんてカワイイんだ。ほおらこっちこいよ」
「ああん、やだーヤメテ!なにこれーいや~ん♡」
魔美異はオタク男の枕元に実現化させられて、馨しい肉体ごと、寝床に強引に引きずり込まれてしまったのです!
「ふ・・・フヒヒ。 なんておつで、リアルな夢だー たまらねえ色っぽい悪魔がおれの寝床に飛び込んできたもんだなー」
「あ、ああん・・・乱暴な人ねーするんなら優しくして・・・」
・・・ ・・・
そうしてまた、魔美異は第二子を身ごもってしまったのですが、この人間の女の子が生まれると、丁度「非愛児」の魔力を打ち消す、相補的な?存在になってくれたのです。
玄妙な黒魔法を、澄明な白魔法がリセットした・・・そういう趣でした。
人間の子供だから「人魅」と名付けられたこの女の子は、悪魔や魍魎のごとくに尻尾とかは無くて、文字通り「尻拭い」をするのに都合がいい女の子だった・・・
そういうオチにしておきます。
<終>
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