第9話 フィーリアの趣味仲間。②
趣味部屋には窓がない。
少し薄暗いが、作業する手元だけには強いライトがあたっているので不便はない。
魔道具作成が趣味の二人は、暇が出来れば集まってここで作業する。
二人のそんな趣味を知っているのは、フィーリアの家とシオンの家の者たちだけ。
ここで子供に戻ったように好奇心の塊になれる事が、重責を担うフィーリアのストレス解消になっている事を知っている為、誰も咎めたりしないのだった。
「なぁ、リア」
「んー? なに?」
趣味に没頭した後は頭を休ませる休憩時間を設けている。
甘いお菓子に美味しいお茶、身体を横になっても余裕がある大きなソファ。
そこに令嬢失格のだらしない姿でデロデロ溶けるように寝そべっている。
茶器と甘い菓子を所狭しと並べてあるテーブルの向こう側に、シオンも同じようにだらけた姿で寝そべっている。
フィーリアと同じソファだ。
寝椅子といってもいいな、このソファは。
と、フィーリアがこの素晴らしい椅子への賛辞をいくつか考えていると、
「リアの婚約者があんなになっちゃって、リアはいいのか」
と、いつものシオンなら言わないような話を振って来た。
「んー、チャラチャラはしてるけど、与えられた仕事を疎かにしてる訳ではないし。
有能なのは変わらずだからね。ただ女にだらしなくなった感じはするけどね」
「その女にだらしない男になった事、嫌じゃない?」
「後に火種になるような子種は撒かないで頂きたいけど、しっかり自衛するなら……王族は一夫一婦制でありながら、世継ぎ関係で場合によっては側妃も迎えるしねぇ。」
「それはそうだけど……リアは、ほら、リアんとこの両親みたいな関係をずっと憧れてただろう? 辛くないのかなって」
その言葉にフィーリアはシオンの瞳をジッと見る。
シオンの端正な顔立ちが眉が下がって情けなくなっていた。
「ブフッ、何、捨てられた犬みたいな顔してるのよ。」
フィーリアが思わず吹き出す。
「ひどー、こっちはリアの事心配で真剣に話してんのに。」
「あ、ゴメン。でも、女嫌いより女好きの方が国にとっては助かるしね? 国政を疎かにされたら困るけど、やることやってて、女と息抜きしてるんならいいんじゃないかなって思うの。私が理想としてた夫婦にはなれないけど、国を担う相手としてなら問題ないし。私と子が出来なくても他の女で頑張れるなら気は楽よ。」
「物分かり良すぎだろう……」
シオンが悔しそうな顔をする。
「まぁねぇ、物分かりいい子ちゃんで居るから、私もさ愛人とか作っちゃっていいかなー。ほら先々代の王妃様愛人の許可が出て晩年凄くお幸せそうだったし。法整備もされて、世継ぎが一人スペアが一人以上居るならば、王妃が望むなら愛人作っても良くなったでしょ? 勿論国政を疎かにしたり愛人へのプレゼントを王妃が自由に使える予算からも与えるのはダメらしいんだけど。民から集めた税から王妃の予算も出てる訳だからそういう事なんだろうけどね。」
「リア……お前、愛人作る気でいるのか?」
「何? ダメな訳? お仕事頑張ってるご褒美に、私だっていちゃいちゃしたりしたいって思っちゃダメなの?」
「いや、そういう訳じゃないけど。リアの両親がお互いだけって感じだから……さ。」
しょげた犬耳が見えそうな情けない表情をするシオン。
さっきからうちのシオンは情けない顔ばかりするな。
私が心配かけてるからか。
「それは結婚相手が共に愛し合うタイプじゃなくて、他に癒しを求めるタイプだから、自分も癒しを求めるってだけよ。」
「リアがそれでいいなら、俺は何も言わない。けど、傷ついては欲しくないから、何かあったら何でもいえよ。」
シオンはいつでも私の味方でいてくれる。
よき相談相手、相棒、家族。
「シオンのおかげよ。私がこんな風に色んな事を客観視出来てるの。最初のチャラチャラ王子みた時は、もう色々と限界だったもの。
今はさ、二人で何を作ろうかっていつも考えてて、何だかよそ事のように達観出来てるから。大丈夫だよ。有難う。」
「ん、いつでも相談に乗るし、何でも付き合う」
「オーケー、じゃあ24時間耐久テスト! あの魔道具で試してみたかったの!」
「バカ! それは無理! リアだって一応令嬢なんだから美容に良くない事はしちゃダメだろ!」
「えー、だめー?」
「だめ!」
シオンとの時間はこうやって軽口多めで続く。
楽に呼吸が出来る。
私は何て運がいいのだろうか。
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