第7話 変わってしまわれた婚約者様 ②
あれだけ皇太子として隙のない立派な振る舞い、皇太子としてどう在りたいかなり高い目標を己に課し、がむしらゃらに学び多種多様な知識を吸収し、その全てにおいて成果を上げ、著しく成長を遂げていた姿を間近で見ていたからこそ、見分を更に広めたいと隣国へ三年留学し、その間もいい噂しかこちらには聞こえて来なかった事もあり、更なる高みに成長した殿下にお会いするものと思っていれば、帰国した途端にチャラチャラした雰囲気で令嬢達に微笑む姿を見たのだ、新手の外交術? と思ってしまうではないか。
まさか、あの殿下が。
中身が別人になったと言われた方がまだ納得できるような振る舞いをするなんて。
激しく戸惑いを覚えつつも、そんな姿を皇宮へと皇太子妃教育で上がる度、何度も見かけてしまう。
見たくなくとも目立っているので目についてしまう。
結果、アレは外交術等ではなく、ただ群がるご令嬢にデレデレしているだけと、やっと気付いたのだった。
あの崇高な志を胸に日々努力を重ねていた高潔であったあの方は、隣国で悪い遊びでも覚えてしまい、今まで真面目一辺倒でやってきた反動が酷いのか、今では何処にでもいる軟派男に成り下がったのだな。と、フィーリアは結論づけたのだった。
高潔で全てにおいて尊敬・崇拝の念しか抱かない完璧な皇太子であられたシリウス皇子。
もう、それの過去の人。「そうだったシリウス皇子」を大変好ましく思い、その好意は少しずつ少しずつフィーリアの胸に積もり、共に過ごした年月と共に恋情へと育ち始めていた思い。
それに蓋をすることにした。
長き時を婚約者として切磋琢磨し時に励まし合い慰め合ってきた、フィーリアと、シリウス殿下。
その関係性が変わる訳ではない。
これからも、共に切磋琢磨し、励まし合い慰め合うであろう。
不要になった思いにしっかりと蓋を閉めただけ。
そして、大公令嬢として義務と責務を全うするだけの婚約・婚姻である、と。
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