13−10
ウィンストンは、人前では穏やかなおっとりとした優等生で、まさに理想的なお育ちのお坊ちゃまにしか見えない
「王太子の自分の方が余程お品が悪く思えるんだよなぁ……」
が!彼は実は恐ろしく、とんでもなく心が熱い男だということをクリストファーは知っている
彼は案外に情熱家で自尊心も高い
『さぁてどうする……?』
クリストファーはウーンと知恵を絞る
『そうだっっ! 昨夜の事は一晩寝たら、全部忘れちゃった事にしよう』
〜そうだそれがいい
僕までうっかり繊細な彼を傷つけてはならない
チラリと〜横目で気配をうかがい見れば、何とか昨日よりも随分顔色が良くなって来たように思える
これはきっと料理長特製スープのお陰だ
後で、甘党の彼の大好きな好物の差し入れを持って、丁寧に沢山お礼を言いに行こう!
クリストファーはなんだかウキウキと心が弾んだ
ーーーーさあ作戦開始だ!!
王家の家族が揃う朝食の席に、「大切な友人」としてウィンストンを招待した
「そんなのマズイだろ?!」
奥ゆかしく控えめに分を知る、聡明な出しゃばりでは無いウィンストンは散々辞退の言葉を言ったが
『入念な計画の為に、絶対に来て貰わなければ困るんだよねぇ〜』
クリストファーは、思いっきりニコニコとぼけたふりをしながら引きずるように〜!
友人が病み上がりで体力の落ちているのをいいことに、ダイニングルームまで無理に連れて行った
『だってだって〜忙しい父上も母上も
……今朝は珍しく揃って王宮にいるのだもんね』
チャンス到来
ーーーー絶好のこんなチャンスを逃す手は無い
……
「ぁのね僕、 直ぐに留学したいんだ」
今朝のオムレツはことのほか美味しい〜んだとクリストファーは思った
料理長の卵料理はいつだって絶品故に
しかし残念ながら。
〜今朝は何を食べても 紙のように味がわかりそうも無い
〜内心緊張で舌が震えそうだからだ
クリストファーはお皿にチョコンと乗っている、ただでさえも苦手なトマトを睨む
……香りがどうにもダメだったからだ
しかし今日だけはお陰で冷静でいられる気がしてくる
父王は先程から〜
今朝に限って妙に頑固で強気な、最早挙動不審ともいえる愛息子のことをじぃっと見つめていた
クリストファーはコフンと小さく可愛らしい咳をする
朝食の席上で、「如何にもたった今」〜〜
『我が儘な僕が気まぐれでフワフワ思いついた』ふりに擬態した
堂々…計画第一弾
『地球への留学』を
〜…シャラーっと父王に、先ずおねだりした
再びウィンストンの顔を横目で何気に観察すると、赤くなったり青くなったり、可哀想な位動揺しているのが見えた
『いいねえ 実はその表情が欲しかったんだ』
今や〜
銀髪紫色の瞳の、虫も殺さない美貌の王太子は結構な策士であった
『ーーーーごめんよ
でもこれで彼と僕との共闘の疑いは晴れるからねっ!!』
〜そう飽くまでも『僕一人の”思いつき”』
気の毒で可哀想なウィンストンは 全然何も知らないのだ
昨夜立てた計画では〜
我が儘な自惚れ屋の迷惑極まる王太子に振り回されているばかりの、善良なあわれな最大の被害者でなくては困るのだ
「「!」」
突飛すぎる話にクリストファーの両親は今にも目玉が、ぴょんぴょーーんと飛び出し
蕩けるクリームのように、へなへなへなと椅子から滑り落ちて卒倒しそうだった
こうしてーーーー
<計画 第2弾発動>には
クリストファーにとって絶好の〜
又と無い〜〜
二度と無い大チャンスが巡って来たのだ
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