7−3
作業を漸く終えたらしきキャシーがクルッと振り返る
その弾みでーーーー優雅な扇のように
誰もがうっとりと褒め称えるキャサリンの素晴らしいロングヘアが、ビシビシと強く吹き込む風で大きく揺れた
シルクのように美しく長いーーー
幼き頃よりボー……と
うっとり憧れ続けて心より褒め称えて来た、愛する人の艶やかな燦めく髪
こんな火急の時ですら夢の如くに美しい大切な君ーーー!
クリストファーは、とある燦めく思い出を心に呼び覚ました
”初めての大切なプレゼント”は、妻のこの髪を引き立てるように
わざわざ原石から輸入し、デザインから『彼女』をイメージして決めーーーー…
<ある理由>で とても思い出深い〜
様々な虹色の幻想的光を放つ繊細な柔らかな宝石を思う存分に使った美しい髪飾りだった
王家お抱えの腕の良い宝飾職人に造らせた、小粒のオパールとダイヤモンドを品良く散りばめた品
「一生大切にします……」
小さな髪飾りを両掌に捧げ持ち、ポロポロ涙ぐむ許婚を引き寄せ優しくキスをした
いつもの頬にする〜『友人』『許嫁』ではない〜
ずっと憧れ続けた愛する女性と、生まれて初めて交わした「愛している」〜
正式な唇への口づけだった
…
キャサリン王太子妃は夫に顔を向けて 穏やかに幸せそうに微笑みかける
とーーー
急に手が動き首筋にかかる長い髪を掻き上げた
「……」
胸元から小さな光る何かが取り出され、パチンと丁寧に髪に飾られる
「キャシー……!」
クリストファーは思わずギョッと息をのむ
「!」
あれは、あのー……
私が贈った『オパールとダイヤモンドの髪飾り』じゃないか!
どうして?
こんな風雲急を告げる緊急時なのにーーー
君はどうして?……
しかし彼の愛おしい人は嬉しげで、うっとりと心から幸せそうな笑みだった
そして……
そして
「貴方は私の誇りです
お心に忠実に
正しいと思われたことを」
確かに彼に向けてそう言った
キチンと正確に聞き取れた
だが既に音なんか聞こえるはずは絶対に無かった筈だった
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