雪の降る夜に食べる緑のたぬき

@katasa

雪と緑のたぬき

 雪が降る寒い冬の夜。


「お疲れ様でした」


 私は仕事を終え、会社を出た。


 今日も疲れた、早く帰ろ。うわっ、雪が降ってる。

 

 雪の中、私は足早に歩く。いつもなら、特に変哲のない普通の道。


 けど、今日は違った。


 綺麗な光が道を照らしている。


 そっか、今日からイルミネーションが設置されたんだ。


 雪と光が、幻想的な光景を作り出す道を、私は進む。


 私は、いつの間にかこの光景に見入っていた。


 普段なら早く家に帰ることだけを考えながら進む道。


 今日は、いつもより短く感じた。


 マンションに着くと、私の部屋の前に、荷物が届いていた。


 実家からだ。何か送って来たのかな?


 荷物を抱えながら玄関を開ける。


「ただいま」


 一人暮らしだから誰もいないんだけど。実家が懐かしいな。


 そうだ、実家からの荷物はなんだろう。そう思い段ボールを開けた。


 緑のたぬき?


 段ボールの中には、箱いっぱいに緑のたぬきが入っていた。


 手紙だ。


『あなたが昔、好きで食べていた緑のたぬきです。しばらく食べていないと、思ったので送ります。母より』


 節約のために自炊するようになってからは、食べてないな。せっかくだし、久しぶりに食べてみよ。


 そう思った私は、電気ケトルに水を入れ電源をオンにした。私は、その間に部屋着に着替える。


 お湯が沸く音が部屋に響く。


 緑のたぬきの蓋を半分剥がし、調味料類の袋を取り出した。


 私は、天ぷらを一度取り出して後から入れて食べるのが、好きだった。


 天ぷらを取り出してから、調味料類を入れ、お湯を注ぎ、蓋の上に天ぷらを乗せて、しばらく待つ。二分ほど経過したところで天ぷらを入れ、さらに一分待つ。


 できた。


 美味しそうな匂いが部屋に充満する。


「いただきます」


 蕎麦を啜り、汁を飲む。


 美味しい。体が温まる。


 蕎麦の次は、天ぷらを食べる。


 カリッ。


 汁をほどよく吸ったサクサクの天ぷらが、蕎麦のアクセントになっている。


「ごちそうさまでした」


 あっという間に食べ終えた。


 美味しかった。また、緑のたぬきを食べよ。


 心地良い満腹感に浸りながら私はそう思った。

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