魔人兄と石人形使い
「待って……待って?」
シーラの隣で、オリヴィアもまた額を押さえていた。聞いた情報を己の常識と照らし合わせ、理解出来るように噛み砕こうと苦心している様子が伺える。
「ごめんもう1回聞いていいかな?何を使って、何をしたって……?」
「5体の
「聞き間違いじゃなかったかあ……」
揃って頭を抱える魔法使い2人に、空になったジョッキをテーブルに置いたドルガンが不思議そうな顔を向けた。
「どうしたよ?こいつがやったことはそこまでおかしいことなのか?そりゃ俺だってあんなちょこまかした
「申し訳ないけどはっきり言って狂気の沙汰」
「私はプロじゃないけど流石に
魔法使い2人はドルガンの疑問を即座に切って捨て、すぐにシーラが言い聞かせるような口調で話し始めた。
「えっとね?ドルガンさん。さっきロイドとセリアにも言ったんだけど問題点は
「お、おう……」
急激に言葉が加速していくシーラにドルガンがたじろぐ。普段は泰然としている印象が強いだけにここまで興奮している彼女の姿はある意味新鮮であった。
「でも彼の
「シーラ、シーラ1回落ち着こう?とりあえずあんたの
セリアが差し出した水を呷りシーラはひと息つく。
「……要は規格外なんだよ。いい意味で普通じゃないから多くの人はあれの正確なヤバさが分からないってこと」
ね?と、シーラが周囲に目配せすると、同じ
予想外の高評価に、クロは内心少々驚いていた。今よりも性能が低かったとはいえ、施設にいた頃は“盾、及び近接打撃戦という
「いや、安心した。本職の方々のお眼鏡にかなったのなら、これ程光栄なことはない」
「君も十分本職を名乗っていいと思うけどね……?一般的じゃないってだけで、
「そうそう、ホントに小さい女の子が動き回ってる感じで……あれってやっぱりモデルはイロハちゃんなの?」
「ああ」
と、クロがイロハの肩を引き寄せる。
「俺もかつては小さい
「も、もう、にぃ様ったら……」
頬を気持ち膨らませるようにしたイロハが兄に抗議するような視線を向けるが、まんざらでもない様子なのはその場の全員に伝わっていた。
「参考になる話と兄妹愛をありがとう。そうか……好きなもの、ね……」
聞いたシーラは少し考え込む。【
そんな彼らにとっては、実用圏外と思われていた小型
(彼、もしかしたら……たった今
シーラはそんな想像さえしてしまっていた。恐怖とも歓喜ともつかないゾクゾクとするような感覚が全身を駆け巡る。
受付嬢ベアトリスがテーブルにやって来たのは、そんな時だった。
「ご歓談中失礼します。クロ様、イロハ様、試験結果を通知致しますので、私に付いて来て頂けますか?」
「ありゃ……残念だけどお開きっぽいわね」
「なぁに、これから話す機会なんていくらでもあらぁ」
話足りないといった様子のオリヴィアに、ドルガンがそう返す。兄妹の合格を、微塵も疑っていないようだった。
「ああ、とても有意義な時間だった。ありがとう」
「ええと……ご馳走様でした」
「おう!行って来い」
「あんたたちなら大丈夫さ」
「そうそう、心配ないって!端から見てても文句ない戦いぶりだったんだからさ!」
「吉報、待ってるよー」
同席していた面々に見送られながら、兄妹は頷き合って席を立った。
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