04【初戦闘】
「今!」
「!」
氷の壁が壊れると同時に合図が来たので言われた通り思いっきり足に力を入れ、飛び上がる。魔法少女になっているからか、物凄いジャンプ力で、一瞬にして家が小さく見えるくらいの高さまで飛び上がっていた。
さっきまで俺が居たであろう場所には、ゾウの見た目をしたアンノウンの鼻が叩きつけられていた。
「た、高い!?」
「安心して、あなたは空を飛べるはず」
「え? ……そう言えば下に落ちないな」
結構な高さで少しビビッてしまうものの、普通ジャンプしたら重力で下の落ちて行くはずなのにそれがない。そこで思い出したのが、俺の背中にあった二対四枚の白い羽だ。
「これ本物だったか……」
「本物というか、魔力で出来た羽かしらね」
「魔力で出来た羽か……」
あまりイメージが付かないが、魔力については一応知っている。
魔法少女たちが力を使うのに消費するエネルギーのようなものだ。これが無ければ力を使う事が出来ない。あとそれぞれの持つ魔力量もバラバラだって言うのも聞いた事がある。魔力量が多いほど、力を存分に使う事が出来るみたい。
空に逃げた俺を見失い、アンノウンは周りを警戒しているように見える。それから少し距離を置いた先にもう一体動く何かを見つけた。ゾウの見た目をしたアンノウンの方に向かっているようにも見える。
「あれが二体目?」
「ええ。こっちに近付いているわね」
もう一体の方の見た目はなんだろうかあれは……狼かな? 狼とか実際見たことないから分からないが、写真とかで見るような狼みたいな容姿をしている。ただそこそこ大きい感じ。
「やるべきかな」
魔法少女の気配はない。
そうなると、対応できるのは俺くらいか……いや俺もついさっきまでは一般人だったんだがなあ。俺はそんな事を思いつつもゾウの見た目をしたアンノウンを見下ろす。
「自分の使える魔法については、自分自身に問いかければ分かるはずよ」
「自分自身に問いかける、ねえ」
「ええ。使える魔法は人によってバラバラよ。他の魔法少女と同じ魔法を使える魔法少女も居るし、全く別の魔法を使う魔法少女も居るわね」
「それは何となく分かる」
自分が使える魔法は自分が一番知っている。
手に握っている杖……いやステッキか? それを握り直し再び目を瞑り、深呼吸をする。そして自分自身に問いかける。魔法を使いたい、と。
「これだ」
すると不思議な事に頭の中に次々と自身の使える魔法が思い浮かんでくるではないか。その中で今使うべきというか、使えそうな魔法を抜粋する。
「――アイシクル・シュート!!」
ゾウ型のアンノウンにステッキの先端を向け、先程選んだ魔法の発動キーワード紡ぐ。先端部分に水色の魔法陣が出現し、そこから無数の氷の礫が放たれる。
「#!#””#$!?」
上空から放たれた無数の氷の礫。それらは容赦なく下に居るゾウ型のアンノウンに降り注ぐ。しばらく降り注がせた後、魔法を一旦止めれば、さっきまでそこに居たはずのアンノウンが姿を消していた。
「やった?」
「のようね。それにしても容赦ないわねえ……というか威力可笑しくない?」
「と言われも」
あれこんなあっさりと倒せるのか?
いや待て……あのアンノウンのレベルが低かっただけかもしれない。レベル2とかその辺りと予想するけど、それにしてはあいつの鼻の威力は頭おかしかったが。
「いえ、あのアンノウンのレベルは4よ」
「まじ? っていうか分かるの?」
「まあ、解析する方法が一応あるから。ただ結構ブレが生じるからレベル3~4と言ったところかしらね」
「それでもレベル3はあるのか……」
「最低でもレベル3以上のはずよ。そんなアンノウンを一瞬で葬り去るとは思わなかったわ」
「……」
まあ、倒せたんだから良いよな?
あーでも、まだもう一体居るのを忘れていた。高度を少しだけ落として再び見下ろし、さっき確認した狼型? のアンノウンを探す。
少し見回したところで狼型のアンノウンを捕捉する。
そこそこ速いスピードで家やら壁やらを伝って移動しているのが伺えるが、俺には気付いていない様子。空っていう結構卑怯な位置に居るからだけども。
「取り敢えずあれもやらないと」
再びステッキを構える。狙いを定め……そして発動のキーワードを紡ぐ。
「――フリーズ・ショット」
今度は複数ではなく単発型の魔法だ。水色の魔法陣が同じように出現しては、さっき使ったアイシクル・シュートと同じように氷の礫が一発だけ放たれる。礫の大きさはアイシクル・シュートよりも大きい。
対象は移動しているので、普通なら偏差射撃とかしないといけないが、その必要はなく速度を維持しながら軌道を変更しつつ対象に飛んで行っている。
……ホーミング機能があるのか。
「うわあ。魔法恐るべし」
追尾性能があるから偏差する必要がなく、問題無く対象に着弾する。着弾した地点の周囲が凍り付き、直撃を受けたアンノウンもまた凍結する。
アンノウンはしばらく凍り付いていたが、少し時間が経過すると自然と砕ける。氷が砕けたのではなく、氷ごと砕けた。そう文字通り
「……弱くない?」
「ここまでとは予想外ね……弱いって、あのアンノウンもレベル3~4よ?」
「マジで?」
「マジでよ」
……。
アンノウンの脅威レベルは一番下が1で、一番上が6の全部で6段階である。レベル1は弱く、一般人ですら殴ればダメージを与えられるほどの脅威度となる。Eクラスの魔法少女が一人でも居れば余裕で倒せる。一般人もダメージを与えられると言ったが、それでも一般人が対抗するのは厳しいので逃げるのが基本。
レベル2は流石に一般人では厳しいものの、魔法少女であればE、Dクラスの魔法少女が居れば容易に対処できる。Eクラスのみの場合は少なくとも2人で対応するらしい。
レベル3となると、2と比べ一気にその脅威は跳ね上がる。というのも、レベル3というのは中間あたりに位置しており幅が非常に広いのだ。4寄りのレベル3と2寄りのレベル3では大きな差がある。
どっちにも寄らない3であれば、DクラスかCクラス、Bクラスの魔法少女が居れば数とかにもよるが対処が可能だ。2寄りであればEクラス、Dクラス、Cクラスの魔法少女で行ける。
4寄りになると、Cクラス、Bクラス、時々Aクラスで対応するのが基本と言われている。
レベル5と6については非常に危険なアンノウンとなる。
5年前に出現した6のアンノウンの話をしたと思うが、下手をすれば国一つを滅ぼせる力を持つ。しかも6というのが上限であるため、それ以上の強さを持っているアンノウンについても6という事になる訳だ。
基本的に6の対応はSクラス魔法少女複数名とAクラスでも更に上位の魔法少女複数名で行うが、無傷という訳には行かないだろう。それはもう5年前の出来事で分かっていると思う。
レベル5については都道府県を1つか2つ程単体で滅ぼせる力を持つとされている。レベル5の対応は基本はAクラス及びSクラスの魔法少女が行い、Bクラスの魔法少女も複数名の編隊で対処する。
魔法少女は基本複数で行動するので、この例は複数人が前提でのものである。
「……まあ良いか」
良くないけど。
レベル3って事は中間。どっち寄りかは分からないけど、とにかく下手に弱いアンノウンではないという事だ。そんなアンノウンを魔法少女になったばっかりの俺が倒した……。
「倒せたから良いじゃない。あと新情報よ。こちらに接近中の魔法少女が居るわ。3人くらいね」
「ちょっと遅いな……他の場所で何かあったんだろうか?」
別に遅いから責めるって事はない。そもそも魔法少女の本体というか、変身前の姿は10代の女の子たちである。いくら志願制というか意思を尊重するとは言え、そんな子に戦ってもらっているのだから。
女の子たちが責められることはないけど、魔法省が責められることはまあまあ、あるな。国の機関だし、ない方がおかしいのだが。
対処が遅いとかそういうので文句を言われることはあまりないみたいだ。まあ、守ってもらっている側も戦っているのは女の子であるという事を理解しているからね。
まあ、明らかに魔法省に責任がある場合はさんざん言われるがな。
それはさておき。
魔法少女と接触するのは今はやめておきたいので、その場を素早く後にするのだった。
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