ただわれひとりで
〆(シメ)
1. 宛のない手紙
お元気ですか。最近はこちらも仕事が立て込んで騒々しくしています。
師走の風は冷たく、日陰は冷蔵庫のようで、仕事帰りの夜など、つま先から身体の芯まで冷え込んでしまって、末端冷え性だったあなたには辛い季節になってしまいましたね。
体調は崩していないでしょうか。あなたの事だから、無理をして、我慢する日々を繰り返していないでしょうか。
つらい時につらいと言わないのは、あなたの美徳ではありますが、今もそうであるのならば、それは望むべくもないことでしょう。
大した力にはなれないかもしれませんが、魔法の言葉を最後に載せておきます。隣に居た短い間も、大した力にはなれていませんでしたが、それでもきっと、何かの役に立つ筈だと思いたいのです。
◼️は、幸せでした。
実を言うと、あなたの顔も、もうあまり思い出せません。
多くのことを忘れてしまった気がします。あなたとの思い出も、靄がかかってしまって、思い返してもちいさな箱に映った映像を遠くから観ているようです。
それでも、芯まで心が凍てついてしまった今でも。
あなたと初めて出会ったあの日だけは、鮮烈な色彩で世界が見えたあの時の掛け合いだけは、まだ忘れていません。忘れられません。
あなたは憶えているでしょうか。あんまりにも時間が経ってしまったから、或いは取るに足らない些細なことだったから、忘れているでしょうか。
どちらでも構いません。どうあれ、◼️にとっては何物にも代え難い、白南風のような出会いでした。
──────────────。
どうか。あなたが今、凍えていませんように。
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