魔王を倒した後は?

にのまえ

魔王を倒した後は?

あと少しだ、あと少しで魔王を倒せる、戦士、魔法使い、賢者、仲間達の気持ちは同じだった。

彼らと王城で出会い、旅に出て共に苦労して三年。


俺達は最終目的地――魔王城の魔王の間に着いた。

魔王が繰り出す魔法に耐えボロボロな防具、ポーションを遂に飲み干し……互いに力を使い果たし、次の一手が勝負を決める最終局面がきた。


「勇者タケシ、魔王を倒せ!」

「倒すんじゃ!」

「勇者、お願いします」


「任された! 魔王、覚悟!」


グオオオオ……!!!!!


最後の俺の一撃で魔王は倒れた、俺達は魔王に勝利したのだ。


そして――今、俺達の長い旅は終わった。


魔王の王座は崩れ、魔王が所持していた――『なんでも一つだけ願いが叶う宝箱』が現れた。


仲間達は剣、防具とか魔法の杖、賢者の衣とかを願うと思ってたが違った。


「私は王都の一等地にプール付きの豪邸が欲しい」


と、剣士は家を願った。


「ワシには世界一美味い酒を一年分欲しい」


と、魔法使いの爺さんは酒を願った。


「僕は故郷に僕のレストランの店が欲しい」


と、賢者は自分の店を願った。


彼らは王都に戻っても剣士、魔法使い、賢者を続けるのかと思っていたが違うようだ。


魔王を倒した後は各々、第二の人生を歩んでいくみたいだ。


そして最後、俺の願いは――『一生分のカップ麺が欲しい!』いろんな街をまわり食事をしてきたが……どの料理も美味いカップ麺には勝てない。


転移者で――無類のカップ麺マニア俺には苦痛だった。願いが叶い、俺の前に一生分のいろんな種類のカップ麺が降ってくる。


「食べたことがないものまである!」


カップ麺に喜ぶ俺にみんなは口を揃えて言った。


「タケシは元の世界に"帰してくれ!"と言わなかったんだ!」


「えっ?」


そうだった……なんでも一つ叶えてくれるんだ。

元の世界に帰ればいくらでもカップ麺は買えた……一番好きな『マルちゃんの赤いきつねと緑のたぬき』が無償に食べたくて忘れていた。


ガックリ膝を落として落ち込む俺に。

俺らしいと、みんなは励ましてくれた。


「行くところがなかったら、私の屋敷に住めばいい」

「なんなら、ワシと住むか?」

「僕のレストランで、住み込みで働けばいいよ」


「みんなぁ……ありがとう、よろしくお願いします」


魔王城、魔王の間で――無限アイテムボックスにカップ麺をしまい。俺は仲間と魔法で湯を沸かして一番好きな"赤いきつねと緑のたぬき"で祝杯をあげた。


みんなは初めての味に喜んだ。


「お揚げが美味い」

「酒に合うな」

「僕のレストランでだしたい!」


「この汁が美味い!」


どこで食べても『赤いきつねと緑のたぬき』は美味かった。

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