作戦No.0024 教えてあげる

次の日

ドラードとリアンは、無線を入手したり、自分たちの部屋へ敵が入られたときにばれないような細工を施すなどといったことをしていた。


ただし地味な作業だったので、とりあえずそこの話は端折はしょらせてもらい、リアン達がヤーレスの町を出発した後に戻ろう。


彼女たちが出発した後、まずは町のそこら中に倒れている戦死した敵兵士の処理をしなければという話になった。

ストルの命令により、クレルとラークは「うげぇ…」と嫌な顔をしながらも横たわる兵士たちを協力して1箇所に集めた。


その間ストルは要塞基地のフィロスと連絡を取り、全員がヤーレスに集まるよう指示した。誰も居ない基地を敵に狙われたら大変だが、いつまでもあそこにいては先に進めない。


やがてどこかに行っていたシェーロがクレルとラークのもとへやってきて、クレルが、


「なあ、これ、なんとかならないか?」


と倒れた兵士について聞いた。

すると、


「いいよー」


非常に軽いノリで、シェーロは快諾し、魔法を使った。

すると、ボッと突然倒れている兵士の全員が青く燃えだす。自然の炎で焼いているのとは違ったイメージで、そこには神秘性が秘められているようにも感じる。


と、そんなこんなあって、要塞基地からフィロス達が集まったところでストルは招集をかけた。


「よし、では今度こそ魔法を覚えよう。もう邪魔するものはいないはずだ」


そう言うと、ストルはシェーロを隣に呼んだ。


「改めて教えてもらおう」


「最初から?」


そうだ、

分かった。

そんなやり取りをし、シェーロの視線がストルからクレルたちの方へ向くと、


「前のわたしの説明覚えてる?あのときはね、私が教えてもらったときのことをそのまま言ったんだよ。でもね、ここ数日魔法をいくつか使ってたら、もっといい教え方が浮かんだんだ」


「ほう?」


皆、興味津々だ。いつも会話の外にいるイストリアとヒストリアでさえ、静かにシェーロの話を聞いている。


「魔法ってね、結構自由なんだよ。思ったこと、やりたいこと、それを想像する。そして、『魔法を使う』っていうイメージをそこに重ねてあげるだけなの」


シェーロが説明をしているとき、彼女は明るく、穏やかに話すので、周りの空気もどこかゆるい。

と思っていたのだが、


「やってみるね」


彼女がそう言った瞬間に、その空気が一転した。

全員に、極度の緊張が走る。

シェーロの表情も、戦闘後の比較的落ち着いた町並みも変わらないのに。

まるで圧倒的な力を見せつけられたような。そしてそれをこちらに向けられているような。


「あれ、見てて」


ただならぬ緊張の中、緊張感のないシェーロが指差した方向は、要塞基地だ。遠いが、はっきりと見える位置にあるそれを言われるがままに見つめていると。



パッ



まばたきをした、その要塞基地がなくなっていた。

金属を使い、少数の兵士でも大群を相手に籠城が可能な、国の守りの象徴であるそれが、一瞬にして。


まるで幻を見せられているように。

でも、なぜか幻とは思えない。辺りを漂う力の気配がそれを幻と認めさせてくれないのだ。


「どう?」


呆然と基地のあった場所を見つめていた者たちが、シェーロの方へ向き直る。


「ど……………………………ま…………………………げ…幻術の類なのか?」


震える声で、動揺を隠せないストルがそう聞いた。


シェーロは首を横に降って否定する。ストルは目を見張った。


「自然の摂理とか関係ないんだよ。火が燃えて、建物が無くなる。そんなの、魔法じゃない。剣を振って、相手が切れる。これも、魔法じゃない」


「だが…突然で…」


未だに信じることができないストルに、またもやシェーロは首を横に振る。


「魔法を使うみんなは、建物を壊す想像をするんだよね。ちゃんと魔法で物を出して、壊すの。私もそう教わった。でも、そんなの無駄が多すぎるよ。だったらそもそも想像をすればいいと思う」


どう、すごいでしょ?

誇らしげな彼女を褒めることができるものはいない。みんな衝撃に打ちひしがれてそれどころではないのだ。

いや、


「ええええ!!すごおお!!」「どうやったの!戻せるの?」


キラキラと目を輝かせているイストリアとヒストリアがシェーロを褒め称えた。


「もちろん」


また、まばたきをしたら、さっきまで消滅していた要塞基地が何事もなかったかのように存在した。

これにはストルも腰を抜かした。そしてそのまま意識を失う。


「すごおおおお!!!」「もっと見せて見せて!!」


理想的な反応を示す双子に、シェーロは照れながらも調子に乗る。

今度は瞬きとともに、雪を降らし始めた。ロマンチックなものだが、またもや常識の外の出来事に脳が処理できない。


「「おおおおおおおおおおお!!!!」」


これには双子もテンションが跳ね上がり、飛び回った。その過程で混乱して目を回しているフィロスが巻き込まれ、ぐるぐる一緒に回る。「あうぅ…」とうめき声が小さく聞こえてきた。


「どう⁉すごいでしょ」


シェーロがクレルに向けてそう聞くので、先程までの出来事に動揺しながら


「お、おう」


と答える。


「もっと雪を積もらせたら」「雪合戦とかできるね」


そんな子供のような発想のの双子にシェーロは、


「いいね!」


やけに乗り気で賛成し、すごい量の雪が降り出した。


「うわわわ」


「さ、寒いわね」


ラークは寒さに震えだし、両腕を抱えているダリアに、レンホスは自分の着ているジャケットを羽織らせた。「ありがと」とダリアが礼を言うと、レンホスは困ったように笑う。


「まだまだ行け…る……あ………れ?」


元気だったシェーロが、突然ふらふらとし始めるのでクレルが慌てて駆け寄る。


「どうした⁉シェーロ」


彼女が倒れると、雪の勢いはどんどん落ち、しまいには積もっていた雪さえ、まるで幻のようにあっという間に消えてなくなってしまった。


さっきまで倒れていて、おそらく雪の中に埋もれていたであろうストルが、唸り声を上げたのでレンホスとダリアが急いで駆け寄り介抱した。


「う、ううん…」


シェーロは力が出ないようで、ぐったりしていて、体が薄くなったりもとに戻ったりを繰り返していた。


「⁉」


どうしたらいいか分からずあたふたとしているクレルに、レンホスとダリアに支えられながらこちらに来たストルが、


「とりあえず寝かせよう」


といったので、その場で魔法の訓練は中断されることとなった。



―――――あとがき―――――



キャラであとがきやるのキツくなってきた…

なので作者が話します。

第一に遅くなってごめんなさい。なかなか話が思いつかず、今日まで来ちゃいました。


今回の話で、シェーロちゃんの力が少しでも伝われば嬉しいな。



次回はここまでのキャラや町などのリストを作ろうと思います。

私の投稿が遅すぎて忘れた人用にね(笑)。


でわ!

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