作戦No.0021 ヴィスとの会話
「名前を聞こう」
長旅で疲れていたリアンは、ヴィスが彼女たちを部屋へ案内するとすぐに、ベッドで眠りについてしまった。
そして次の日、リアンとドラードの2人は、街の偵察のために外へ出ようとしたところ、玄関でヴィスに捕まってしまい、朝食と共に話をしていた。
「私は…」
ここでリアンはちらりとドラードの方を見た。本名を使っていいものか分からなかったし、こうなったときの偽名についても決めていなかったからだ。
「あー………ああ〜………俺はドーラド。こいつはアンリだな」
な…なんて安直な…!とリアンは思った。そう思われていることを察してかドラードも目を合わせようとしない。
本当にスパイの経験があるのか疑わしくなってきた。
「アンリはともかく、ドーラドか。なかなか珍しい名前だな」
「ああ…俺もそう思う…」
後ろめたさを隠しきれないドラードが、パンを食べるでもなくいじりながら答える。
「はっは、で、お前たちはあの戦闘を見たか?」
「あの戦闘?」
思わずリアンが聞き返す。ヴィスはそこで返されることが以外だったのか、驚いた顔をしている。
「なんだ、お前らあの場にいたんなら分かるだろう。あの2人組のことだよ。あいつらにボロクソやられたから逃げてきたんじゃないか」
あの2人…2人?
リアンはピンとこない。なぜならば、このヴィスという男がヤーレスの町にいたのを知らないからだ。
だが隣のドラードはすぐに気づいた。
「ああ、あの2人か。いや、俺もしっかり見たわけじゃねえからよく分からねえ、いや、見たものの理解ができなかった、といったほうが正しいか」
お前たちもか…
ヴィスは椅子に深く座り直して顎に手を当てて考え込んでいる。
「残念だが俺が直接そいつらを見たわけじゃねえ。今まで部下たちから聞いたことをまとめると、どうやら男と女の2人組で、女の方が超能力を使うらしい」
何歩か遅れてリアンも、クレルとシェーロのことを話していると気づいた。
「そうか…」
「へ、へー…」
全力で知らないふりをする2人。ドラードはともかく、リアンは何ともわざとらしい。だが、幸い気づかれた様子はない。
「とにかく、このままやられっぱなしってわけにも行かねえからな。一見超常的な力を発揮しても、必ず弱点はあるはずだ。そこをいかにして早く見つけるかが鍵ってもんだ」
ダン!
ヴィスが、高揚していたために机を叩いた。
「弱点か。どうやって見つけるんだ?」
「そこが難しいところなんだ。ヤーレスのときは俺が指揮してたからどうにかなったんだが、今は下っ端同然だからな…」
あっさり出てきた『ヤーレスの指揮官』宣言に多少の同様を見せるドラードとリアン。お互いに言葉を失い、目を見合わせる。
「いくら俺が言ったところで、カウのやつが聞くとも思えねえ」
「カウって?」
リアンが聞いたことに、「知らないだと⁉」という反応を見せるヴィス。
「カウってのは、お前らがここに来たときに散々悪態ついてきたやつだ。この街にいる部隊の隊長だ。俺よりも偉いから逆らえねえんだ」
ああ、たしかに、ここに来る前にそんなやつに出くわした。非常に嫌なやつだった、そんな印象をリアンは持っている。
思い出した際に、無意識に顔をしかめてしまったのだろう。その反応に気づいたヴィスが笑った。
「くっくっく…そうだよ、お前さんの印象通りのやつだ。あんなのが戦いに負けて逃げてきたやつのことなんて聞くと思うか?」
リアンは首を振った。想像してみても、それが一筋縄でいかないことが容易に理解できる。
「…上の悩みなんて俺たち下っ端にゃよく分からねえがな。やりたいことがあるってんなら従うぜ?俺とこいつはあんたの部下なんだからな。昨日言ってただろ」
「そうか、なかなか心強いことを言うやつだ。ところでどこかに行こうとしてなかったか?」
「ああ、街を見て回ろうかと思ってな」
「そうだったのか、ならばそろそろ終わりにしたほうがいいか」
ヴィスは立ち上がった。それにつられてリアンも立ち、数秒後にドラードも立った。
そのままヴィスと一緒に玄関を出て、通りの真ん中で止まる。
「ではさらばだ」
それだけ言い残し、ヴィスは通りの奥に消えていった。
―――――あとがき―――――
クレルです。
キャラ付けは、絶対に敬語を使わない。ってとこかな。え、今さっき敬語使った?これは作者が言えって…
とにかく、短くてごめんな。
じゃあな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます