第74話 大果樹園

 ハジメに、全力で走って貰いました。

「エリマキトカゲの走り、侮っていたよ!」

 TVCMでの画像、思い出しました。

 そう!この走り、勢いで水面まで走っちゃう!あの走り!!

 蜥蜴人の疾走は、私達より遥かに速い。


 私も全力疾走で追いかけますが、徐々に離されて、見えなくなる前に呼び止めました。


 ゴウギ侯爵領に居た蜥蜴の魔物、こんな感じで、大河を走って渡って来てたの?


 私達の速度に合わせて走る、ハジメに着いて走ります。


 チラホラ見える蜥蜴人達、果樹園の世話の手を止め、恭しくお辞儀をし、私達が駆け抜けると再び作業を始めて居ました。


 果しなく続く桃園でしたが、やがて途切れ、見慣れた赤く実った柿園に到着しました。


主様あるじさま!どうぞお召し上がり下さいませ!!」

 柿園の管理している蜥蜴人が、柿を切り取り両手で押し抱く様に、渡してくれます。


 片手に余る、大きく実った富有柿!これも私の大好物です。

 我慢出来ず、かぶり付きます。

「美味しい~ぃ!!」

 蜥蜴人の表情は分かり難いですが、管理人は嬉しそうにみえます。

「あたご柿や大秋柿、色々高価な種類が有るけど、柿独特の味と甘さは、富有柿が最高よ!!ありがとう!美味しかったわ!!」

「モット甘ク、美味シク育テマス!!」

 管理人は嬉しそうにお辞儀して、私達を見送ってくれました。



 走り続け、期待に胸膨らませ、たどり着きました。

「ミシ神様!!有り難う御座います!!!」

 目の前一面、たわわに実った緑の葡萄!!これぞ夢の『桃太郎マスカット』アレキサンドリア種よりもっと高価な、皮ごと食べられる超高級マスカット!!


 実った粒を、摘まんでは食べ、摘まんでは食べ!一房食べて尽くしても留まりません!!


「サイちゃん!嬉しいのは解るけど、何れだけ食べるの?」

「幸せそうだけど皆呆れてるぞ!!」


 進君と豪君に言われ、見回すと呆気に取られた顔の面々。

 ちょっと恥ずかしい!

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