いやああ。着ぐるみパジャマ見られたうわああん

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

惰眠を貪っていただけなのに

「おっすシホ、今日はサメに食われているんだな」

「いやあああああ」

 

 お母さんが、チエ先輩を勝手に家に上げてしまった。


 私は慌てて、ベッドに潜り直す。



 もう、どうしていつもこんな目に。

 チエ先輩には、私のだらしない格好ばかり見せている。


 この間も、コンビニでヨレたセーターでハチ合わせるし。


 今日だって、徹夜執筆に疲れて惰眠を貪っていた。


「見ないでくださいぃ」

「いいじゃん。かわいいから」


 チエ先輩は、私の許可もなくコタツに入る。


「あーぬくい。当分ココから出たくない」


 このままココにいられると、ずっと私の着ぐるみを見られてしまう。


「早く出てきなよ」

「うう。着替えます」


 私はベッドの掛け布団にくるまりながら、タンスまで移動する。


「別にいいじゃん。笑わないから」


 先輩が、私の掛け布団をひったくった。ベッドに毛布を戻す。

 

「ダメです。こんなマッタリした状態で先輩に応対なんてできませんから」

「そういうリラックス状態のほうが、いいのが書けるんだよ」

「先輩だけですよぉ、そう思ってるの!」


 まあまあ座りなよ、と、チエ先輩はサメ着ぐるみの私を向かいに座らせる。


「ほら。ノート立ち上がったまんまじゃん。続き続き」


 チエ先輩は、私のノートPCを指でコンコンとつついた。


「あたしも書いちゃお」


 自前のノートをカバンから出して、先輩も作業を始める。


「菓子類とジュースとかは、買ってきたから」

 

 チエ先輩は私に炭酸のボトルを渡すと、コタツテーブルの上にお菓子の袋を開けまくった。


「これが、先輩の執筆スタイルなんですね?」

「うん。散らかってるほうが落ち着くっていうか、アイデアが湧く」

「わかります。変に片付いていると、頭までクリアになりすぎて凡庸な話になります」

「そうなんよ。心理学的にも『散らかっている方が、創造性が高まる』って説が正しいらしくてさ」


 ポテチをムシャムシャと頬張りつつ、先輩は自前のウェットティッシュで指を吹く。

 汚れた指でキーボードを触るのに、抵抗ないんだなぁ。


「ンフフ……」


 なんか笑いながら、チエ先輩は作業をしていた。


「あ、ごめん。気になるかな?」

「いえ。平気です」

「あたしダメなんだよ。表情が顔に出るから、外で書けない。フリースペースとか試してみたけど、吹き出しちゃって」


 周りに迷惑をかけてしまうと、あまり外で執筆はしないという。

 ノートPCは執筆用ではなく、大きい画面で投稿サイトの小説を読む用に持ち歩いているらしい。


「ああ、集中できない。シホ、ちょっとタンス見ていい?」

「えええ、ちぃおっちょ!」


 わたしが奇声を発して抵抗するも、先輩はタンスを堂々と開けてしまった。


「よし、これだ。ちょっくら借りるね」


 言って、先輩は私の着ぐるみを身に着け始める。

 今の私と同じ、服の上から着るタイプだ。


「おお、恐竜いいね」


 小さいシッポをなでつつ、先輩は着心地に満足していた。


「先輩、かわいいです」

「ありがと。でもサメにはかなわないかな?」


 先輩は苦笑する。


「でもなんか、勇者がドラゴンと戦うシーンだから、雰囲気出るな! 貸してくれてありがと、シホ」

「どういたしまして」


 厳密には、強奪されたのだが。 

 

「で、シホ。今書いているのは、どんな話なん?」

「書けてからの、お楽しみです」


 言えません。コタツでモンスター女子同士がイチャイチャする話だなんて。

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いやああ。着ぐるみパジャマ見られたうわああん 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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