てすと 2

@mi_cp5

何を求めるのか

きっかけは本当に何でもよかった。

触れ合えれば、分かり合えれば、それだけでよかったはずだ。


最初こそ、それは初々しいと形容するのも躊躇うくらい青だった。お互いにそんな行為をしたことがなかったから、見聞きした知識だけで重ね合った。

結果は曖昧なものだった。

「なんかよく分からないね」

その通りだった。


回数を重ねると酷くなっていくのがなんとなく予想がついていた。

快。生殖行為に付加された感触。感覚。

お互いに言葉を交わすことも少なくなって、ただ部屋の中は濡れた音で満ちていた。

「明日も会える?」

バカだったから会う。何度も繰り返す。


気付けば会う頻度が落ちていた。

それがもう示していた。

僕らは何をしてたんだ。何を求めてお互いを選んだのか。何を見ずに快楽を取ったのか。結果どうなったのか。


それ以来、性が嫌いになった。生物として与えられた機能すら嫌悪していた。自分は駄目なんだ。きっとその行為の先には進めない。命は簡単に生まれちゃうんだ。それをどう思うんだ。どうも思わない。


愛することも愛されることも叶わない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

てすと 2 @mi_cp5

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ