「ニコル、告発される」
バイトン・クラシェル正
騎士見習いたちによって持ち回りで運営されている食堂は午前中の営業を中止させられ、
支給されるのは二個のパンと、
そんな
「…………なんだ?」
午後のおやつにありついてもおかしくない時間、ようやく
入口に現れたニコルに気づいた騎士たちが
「……おい。あいつ……」
「あれがニコル…………」
「マジかよ、あの話…………」
「
ざわめきが白い歯を立てる白波のように
ニコルの心臓が冷たく、
この
と、すれば想像できることの
『――まさか、昨夜のことを、
サフィーナが誰かに
「――お食事中、失礼します」
「な、なんだよ」
明らかに目が据わっている厳しい表情のニコルに、青年ふたりは捕食者に狙いを定められた獲物のように怯えた。
「今、
「いや、
「耳に届きました。あなたたちの声で僕のことを話していたのが。
「う」
「僕がなんだっていうんですか」
「お、俺たちはあの『告発文』について話してただけだ」
「……『告発文』!?」
ニコルの思考の歯車の大きな動輪が、がたり、と音を立てて外れそうになった。
「食堂の
青年の視線が横に向けられる――その先、今し方ニコルが入って来た入口の
周囲の注目を浴びながらニコルは
その『告発状』の最初の文面、見出しを読んだニコルが
「――なんだこれは!?」
◇ ◇ ◇
駐屯地からゴーダム
館の
「わ、ニコルにいさま――――あれ?」
「…………ニコルにいさま、なにかおこってるの?」
館の廊下を
廊下の奥の奥――ゴーダム公爵の
「閣下!!」
「うわ」
執務室の机に
「なんだ。サフィーナのような勢いで扉を開けるな。
「蝶番やら僕の給料なんてどうでもいいんです! これを!」
「『告発状』のことか?」
まさにその『告発状』をゴーダム公の前に叩きつけようとしたニコルの
「ご存じなんですか!?」
「まあ、
「はい!?」
ニコルの顔に
「こ、こ、この『告発状』にはとんでもない内容が書かれ、それが駐屯地中の
「落ち着け。だから知っていると……」
「この『告発状』には、ほ、ぼぼ、僕と、お、おおお、お――けほ、けほけほ、けほっ」
「ニコル、息を吸わないと死ぬぞ」
「僕と
バン! と全力を
「誰がこのような
「ニコル、息を
「僕は今からこんなデタラメを書いた者を探し出し、騎士の
「探し出す必要もないし、斬る必要もない」
「閣下!! ご自身の
「思わないな」
ゴーダム公はまるで動じていなかった。むしろイタズラげな
「
「当然だ。それを書いて貼り出したのは、このゴーダム家公爵たる、私自身なのだから」
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