「抜刀、そして」
こめかみに重い
「ぐぅっ!」
激しい回転により三半規管が死にかけているところを、地面で体が
その場――『
この
あのニコルが、ダクローを
理解が追いつかないものを見せつけられ、騎士見習いたちは呼吸さえ忘れていた。
「あ……い、て、て、てて、て…………」
ふらつき、頭に手を当てながらダクローが立ち上がる。服の半分が自分で巻き上げた土で
「……チビのくせに、なかなかいい
よろめき、
「どうして…………」
「――あ?」
震えているのはニコルも同じだった。
今し方ダクローの後頭部に
「どうして……どうしてそんな
「……ニコル?」
ダクローの心が半歩、
「
「おいおいおい、お前、騎士団に入る時に規約を聞かなかったのか」
――こいつ、キレたら本当に何をしでかすかわからねぇな。熱くなる
「騎士団内でのケンカ
「ケンカじゃない! これは
「今時決闘かよ。俺より若いのに古くせえ
ダクローは首を大きく回して肩のこりをほぐすと、腰のレイピアの
「――おい! 周りの
そのダクローの叫びに、
「今、このバカの方から俺に決闘を
「――まだ、僕が死ぬと決まったわけじゃない」
「二十四人を斬り
「…………!」
怒りに
「そんな程度の精神で、悪口を言っただけの俺を殺せるのかよ。今なら
「く…………!」
激情に任せて剣を抜いたニコルは、柄に手をかけてはいるが抜こうとはしないダクローを前に
だが、マルダムに対する
友の
命を
もちろん、駐屯地の真ん中、しかも衆人
最低でも、騎士団の追放。悪くすれば、それ以上に重い
「つ……追放…………」
ニコルの心の表面にリルルの
騎士団を追放などになれば、ここに来た意義が全て
自分はなんのためにここに来たのか。リルルとの
今、この剣を
他家の騎士団を追放された騎士など、どこの貴族が
そもそも今の自分は、騎士ですらないのだから――。
「か……」
ニコルの指の中で剣の柄が浮き、
「かまう、ものか…………」
揺れていたニコルの瞳が、
剣を構える少年が足の裏の全部で地面を
少年を小さく震えさせていた怯えが
そんな少年の姿にダクローは
「――やる気になったのか」
「……どうせ、任務先で二回も死にそうになったんだ。死んだつもりになればどんな罰も受け入れられる」
「とことんバカな
今、目の前で決闘が行われようとしているのだ。そんなことはこのゴーダム騎士団の歴史の中で何個事例があるだろうか。
少なくとも、前例を挙げられる者は今、この場にはいなかった。
「――ま、嫌いじゃねぇがな……そういうことは……」
相手を斬るつもりになった二人がじり、と足裏を
互いの戦意が火花を発した時、体は前に動いて勝負が決まる。
戦いは一撃で決着が着く――なんの
「――行くぞ」
「来いよ、ニコル」
二人の間で生と死の境界線が浮かぶ。相手に向かって踏み
そんな、世界で最も危険な線を二人が踏み出そうとしていた、その時だ。
ある人物がニコルの肩に手をかけたのは。
向かいにいてニコルを見ていたはずのダクローも気づけなかった。その人物がニコルの背後から近づいてくるのが見えなければおかしい角度だったのに。
「――え…………?」
肩に触れられて初めて、ニコルはその人物の接近に気づいた。戦意が
「ゴ…………!」
騎士見習いたちの顔に、今度こそ本当の
静かな怒りをたたえてそこに立っている
「ゴーダム
「うぐっ!」
風に吹かれた葉のように吹き飛んだニコルが地面に体を打ち付ける。同時に
「ニコル」
それは、なんの
「動くな。今からその
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