「初陣・――毒」
ザアーの町を
先行した
「
町の防衛に当たっていた現地の兵士たちの対応が
「飛び火しないうちに消火しろ!」
重傷を負って転がされている盗賊たちが現地兵によって
この
物が焦げる臭いはともかく、むせかえる血の臭いは初めて
「これが……
自分たちが
「『幻の盗賊団』の規模は大きくなかったはずだよ。そんなに大きくがない
ニコルが戦場の空気に飲まれて暴発するのを防ぐ役目を仰せつかっているマルダムもまた、意外な展開の意外な結末に戸惑っている。
先行した騎士たちが現地兵に指示を出し、まだ息がある盗賊たちを集めて縄で
「従兵たちは下馬して騎士たちを
「略奪と同時に
「逃がした者もいないようだ。大勝利じゃねぇか?」
「――規模が小さすぎる」
チャダ正騎士の言葉に、集まっていた騎士たちの表情が
「
「
「こいつらはハズレか?」
「息がある
チャダ正騎士が
「まだ十分
「アリーシャ
先輩たちが現場を入り乱れるように動く中で、自分がやるべきことを見つけられずに
「
「はい、わかりました」
「マルダムは町の外を警戒しろ! 仲間たちが周辺にいるかも知れない!」
「はい!」
人の足と声が入り乱れる中、ニコルは幌馬車に向かって走る。そんなニコルの目に、物置らしい建物の
「た……助けて……」
顔の半面を土に
背中の一面が血で濡れているところを見ると、かなりの出血をしているようだ。今まで見つからなかったのは動けず、逃げることもできなかったためか。
「
ニコルは周囲を
「た、助けて……た、
倒れたまま動けず、弱々しく
「わかった、待ってろ。今、傷を
動けないと思える手負いの敵の姿に
不意に盗賊が顔を起こし、ギラついた目でニコルの目をのぞき込んだ。素早く首を動かしたその動作と、弱々しげだった表情に
「う――――!」
盗賊の
「ニコル!!」
悲鳴のようなアリーシャの声が聞こえたと同時に、
「ぶへっ!!」
「そいつを地面に
「はい!!」
マルダムを
「ニコル!!」
自分が助けようとした男が
「お前、今自分が何をしようと、何をされようとしていたのかわかってるのか!?」
「ア、アリーシャ先輩…………!?」
まなじりを
「取り上げました!」
「よし、貸せ!」
「危ないぞ。
「抜かりない」
無数の軍靴の
「ニコル、これが何かわかるか」
准騎士が細い筒と黒い針をニコルの目の前に差し出し、視界から外さないように据えた。
「な……なんですか、それは……」
「吹き矢の筒と、毒針だ」
毒、という言葉にニコルの胃の底が、ズンと音を立てるようにして冷たくなった。
「お前は聞いたことがないだろう。毒使いの盗賊団を」
「ど……毒使いの盗賊団……?」
正騎士のチャダまでもがそこにいた。部下から受け取った針を注意深く検分している――その針一本に
「半年近く前に
頭を上げさせろとチャダが
「じっとしていろよ。今からこの針をお前の耳たぶに刺す」
「ぃっ…………!」
やめてくれ、と血まみれの盗賊は言おうとしたらしいが、
「暴れて耳たぶ以外に刺さっても責任は取らんぞ。耳たぶならそれを根元から切ってしまえば毒が顔に広がることはないんだ――ニコル、見ていろよ」
「…………!」
予感に震えたニコルが、目を見開いた。
もう
――
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