「双眼鏡の視野の中」
それは、夜の
だが、三百歩以上は
「停止しなさい」
百メルト先なら篝火の近く、炎の明るさの中に
「近くにハシゴがあるはず」
「――ありました!」
「声が大きい」
「すっ、すみません」
後ろで
「話だとハシゴは五本。一本につき三人が上りなさい。落ちたら二度と参加させません」
「は、はいっ」
先頭の声もまた少女だ。後ろに
「
言葉の通り、篝火に最も大木の幹に立てかけられ、
自分たちはその少女のおかげで、この美味しい話に一枚
ハシゴの段に両足を乗せ、
炎の赤さを
「あ…………!」
黒く
◇ ◇ ◇
「あれ?」
鋼鉄の缶の中の湯船の中で、
「どうしやした、
「……いや、ちょっとなんか、
「気のせいでやしょ。ここは
「そうだね。そのはずだね。そのはずなんだけど……」
「この男ばかりの駐屯地に、旦那の
「まあ、そっか」
「さあ旦那、これで体を
「ありがとう、本当に助かるよダリャン」
「いいえ、こっちも本当に助かっておりますので」
「え? どういう意味?」
「旦那の残り湯にあっしも入れるということで」
ニコルはダリャンが
「小者のあっしがこんな所でひとり用の
「なら、どんどんここで|露天風呂に入らせてもらうかな。ふたりで幸せになれそうだ」
「それにおまけもありますし」
「おまけ?」
「いえいえ、こっちのことで」
小者のダリャンが示した
その
「どうしやした、旦那?」
「今、誰かの声が聞こえたような気がして」
「ここら辺は動物も住み着いておりやすからね。噛みついてくる動物はおりませんが、
「
「そんな森ですから、旦那が真ん中で風呂に入ってるのを
「
「そうでやしょそうでやしょ。さ、がーっと体を磨いてくださいな。がーっと」
「うん」
「でもなるべく後ろは向かない方がいいでやすよ。特にこの缶から出る時は、上がってきた段の方を向くようにしてくだせぇな」
「段の方にしか体は向けられないよ。変なダリャンだなぁ」
「まあ、作法とか、そういうのがありましてね……旦那も
「
ニコルはますます首を捻らされたが、それ以上は気にせず体を磨くことにした。
◇ ◇ ◇
双眼鏡の狭い視野の中で、お
「サ、サフィーナお
先ほどたしなめられた同年代の少女がサフィーナの下の段で同じように双眼鏡に目を当てている。さらにその下の段にも、別の大木に立てかけられた
「あら、私としたことが」
サフィーナは
「でもこれって、近くで
「誰がこのハシゴを立てかけたと思っているんですか? あの派手なくらいに明るい篝火だってこのためのもの。ダリャンにはしっかり
「さすがサフィーナお嬢様!」
「私たち一生ついていきます!」
良家の
「静かに。そんなことより集中しなさい。ニコルがいつまでも湯船の中で立ってくれているわけではありません」
誰よりも最も集中するサフィーナがいう。赤い炎の光を照り返して
少年の体をほんの
そんな少年が湯に
「でもサフィーナ様、どうしてわざわざあたしたちを
「その気になれば、お嬢様ひとりで
「美しいものは共有し、みなで
「まったく不自然ではありません!」
「声が大きい」
声が
「いいですね。今夜のことは仲間内で言いふらしたりしないように。そんなことが
「はーい!」
「声が大きい!」
「はーい」
「よろしい」
「わ、今、おしりが見えた!
「声が大きいと言ってます! 静かに!」
サフィーナは念を押し終わると、その『美しいものを愛でる』作業に自らも
街での遊び仲間に声をかけてこんな夜中の場を設定したのは単に、自分ひとりだけでのぞきをするという罪悪感を人数割りすることで
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