「他人の剣」
意を決して
「ぐっ!」
バイトンの
恐れた、と言っていい。未知のものをいきなり体感させられて、ニコルの肌の全てが鳥肌を立たせていた。
「く――――!」
自分が半瞬、
対するバイトンは、そこから――
「どうした。お前の
「は、はい――――」
脳に漂った
これは
打ちかかれ。相手はそれを要求しているのだ、ニコル、打ちかかれ――。
「さあ、気合いを入れろ! 教えてもらった全部の技を
「行きます!」
そこから、春の
フィルフィナから教えてもらった
目の前にあるものが人の形をした氷の
その全てを、まるで小雨のように受けるバイトンは
「つ――――!!」
一方的に打ち込むのが許され、反撃のひとつもされていないのにニコルは自分が
陽動や
二分の間に打ち込んだ回数は、確実に百回を軽く
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ――――!」
熱湯のように熱い
この激しさの中でもバイトンの目は氷のように冷たい。全く燃え上がることのない心に
いつの間にか手を止め、ニコルがバイトンに打ちかかり続けるのを遠巻きに見つめている訓練生たちの顔には
「終わりらしいな」
「ふぅっ、ふぅっ、ふ――…………」
手に張り付いた
三十分以上に
「ニコル、お前の剣はなかなかのものだ」
「な、なかなか……?」
なかなかの剣であるのなら、
このバイトンという
実戦に出ない『
「剣のひとつひとつはできている。しかし、全てが当たり前のものであり、お前の剣ではない。お前は他人に教えられた剣をそのまま使っているだけだ。なにひとつお前のものになっていない。お前は他人の剣を借りているだけなのだ」
「剣を、借りているだけ…………」
それが基本と応用という話なのだろうか?
他人から借りた剣を自分は、自分のものにしてこの手にしないといけないのか。
だが、それはどういうことなのだ――。
「ではひとつ、お前に『
「え?」
その言葉の意図を計りかねたニコルの視界の中で初めて、すっとバイトンの
今まで力の入っていなかった青年の目がわずかに細められ、気の高まりを感じた訓練生たちはバイトンの言葉に従い、
ニコルの額に予感の
「ふんっ!」
ただ一歩、
いや、それは衝撃というにはあまりに小さい。
「う――――――――!!」
両の手のひらをまるで
「えっ――――――――!?」
切断――いや、
「な…………い、今の技は…………!」
ニコルは考えるよりも早く、手に残った木剣の半分、その断面に目を向ける。
まるで
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