「夢と幻」
その夢は見る
『――
医務室の
『何をしているのだ、お前は! お前の三人の兄は、他家で立派な騎士となったというのに! ワシの
――
俺の右腕は千切れかけて、切断まで
今だって
『お前がこんな
そんな、親父、待ってくれ。そんな簡単に、俺を見捨てないでくれ。
親父の夢をかなえるために、そのためだけにこの二年間、がんばってきたのに――。
『あなた、コンストン家の四男
『初めまして。
マートン……マートン商会の
『
その話はされたくない。帰ってくれ。
神童なんて呼ばれていたのも、
俺はもう、何も考えずに寝ていたいんだ……。
『いいじゃないですか。親の夢を
――酒か。お前もまだ、十四
『
――だから、なんだ。
『私と
……お前みたいなのを毛嫌いする輩、か。
俺もお前みたいなのが嫌いだよ。
――でも、いちばん俺が嫌いなのは、お前みたいな
親父が
それもいい。このまま
どうせ、俺などは、それくらいの価値しかないのだから――。
◇ ◇ ◇
「――――――――っ」
自室の寝台の上、窓の外がようやく白みだした
心臓がわずかに
口の中が
「……また、いつもの夢か……」
「――ちっ」
起き出したダクローは
「――――――――」
中をのぞき
「こいつは…………」
いつもは女を
顔をしかめてダクローは扉を閉め、
「――ふぅっ!」
早朝を
集合住宅の階段を駆け降り、まだ
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
ゴッデムガルドで
約三十分の時間をかけ、全速力よりひとつ下の勢いでおよそ十カロメルトを走る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
走る、走る、走る、走り、走って、走る――。
――走る、か。
――自分は、いったい何のために走っているのだろうか?
四年前、腕を切断されかける重傷を負ってから、准騎士になろうという意欲は
准騎士になるための試験の場に並び、
そしてもう自分は二十歳だ。准騎士になる実力のない騎士見習いなら、見切りをつけて別の人生を
そんなに
だが、このまま何もせずに本当に腐りきってしまうのも、
自分にはまだ望みがあるのだという、最後のか細い希望をつかむために、目的のわからない
――あの時、あの日。
あんな
「くそっ!!」
森の中、自分の
大木の枝から
「くそ、くそ、くそ、くそ――――!」
胸の内に
「これも……あいつが
木刀で打ちまくる人型の板に
明るい金色を帯びた、やわらかい
六年前に自分が浮かべていたであろう、希望を持つ者が見せる決意に満ちた口元。
「――ニコル……!」
その幻のニコルに向かって、ダクローは
自分の言っていることが筋が通らず、
それでもそうしなければ、自分の心の内側を
「あんな奴が来るから俺の心が掻き
自分があの日失ったものの全てを
その理由が全てわかっているから、青年は
それは、全て自分に
「くそぉ――――!」
それがゴッデムガルドの
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