「配属される先」
一夜明けて。
午前九時にニコルはゴーダム
式に列席している人数は少なかった。
これが正式な騎士階級――準騎士以上の
「ニコル・アーダディス」
「はい!」
場所もゴーダム公爵の
それでも自分の入団がかなったことは事実であるニコルの心は
自分は、そのためにこの地に
「お前に
「はっ! ありがとうございます!」
副団長のオリヴィスが
「サフィーナ、お前は
「
「授業は始まったばかりでしょう?」
「お
「お茶の時間にしてあります」
「まったく、お前のこととなるとあの
妻と
確かに上背のない
「そして
一歩歩み寄ったゴーダム公が、親指の先ほどの大きさをした
色が金色でもなく銀色でもなく
「それでお前はどこでも、このゴーダム公爵騎士団の一員と認められる。――この言葉の裏の意味は、わかるな?」
「はい! どこにいても、騎士団の一員として
「そういうことだ」
満足を得たゴーダム公が
「ニコル。ゴーダム公爵騎士団について簡単に説明しておこう。今お前はゴーダム公爵騎士団の一員である騎士見習いになったわけだが、当然のことながら正式な騎士ではない。ゴーダム騎士団で騎士と認められるのはお前のひとつ上、準騎士からだ」
「はい、心得ています」
「ゴーダム騎士団はその準騎士、正騎士、上級騎士から構成される。まずは最上位の上級騎士、
「はい」
「その上級騎士はそれぞれ四人の正騎士を直接の部下としている。つまり正騎士は百四十名
「ええっと…………七百三十五人、でしょうか?」
「計算はまあまあ速いようだな」
オリヴィスは歯を見せて笑った。
「それが実際の在籍する人数であるわけではない。が、だいたいそういう人数であると思ってくれて
「は、はい――」
戦場。
物語や人の口に伝えられて聞く言葉だが、そんなものを自分の目で見たことはないニコルは
「そして騎士ひとりには従者が加わる。従者は日常において騎士の生活の世話をするが、戦場に
「はっ!」
「…………あ!」
執務室の
「君は――確か、
「む? 二人は初対面ではないのか?」
口にするオリヴィスも、椅子に座して様子を
「はい。昨日の朝、このお
「
「そうか、君が
「い、いいえ。レプラーが……レプラスィスが
「それがすごいというのだ。あの
バイトンが差し出した右手を、ニコルは
「バイトン、あとは任せた。ニコルのことをよろしく
ゴーダム公は席から立ち上がり、オリヴィスを従えて
「クラシェル
「は、は、はい、
「では
「はい、クラシェル様」
「バイトンでいい」
口元にわずかな微笑を見せてバイトンは言った。
「気楽に呼んでくれ。バイトンさん、くらいがちょうどいいかな」
「か、かしこまりました」
「
「失礼いたします!」
「ニコル、なにか不便や不都合があったらいつでも
「またお会いしましょう、ニコル」
二人に手を振られて見送られ、バイトンとニコルは執務室を退出した。
「あのお二人に大変気に入られているようだな」
「あ、ありがたいことです」
足早といった歩調で
「私もこの騎士団に入って
自分の背中について歩くニコルが
「昨日の朝、君と出会ったのは私だけではないだろう。私の前に君が
「…………覚えています」
忘れられるわけがない、と言いそうになったのをニコルは
「私には騎士見習いが四人いた。本来ならそれで定員なのだが、君が私につけられたということは、どういうことかわかるな」
「一人が、欠員したというわけですか……」
「
「あの二人が…………」
どちらがダグローでカルレッツなのかはわからなかったが、二人
早朝から通りすがった旅の少年に絡み、
「この騎士団にも規律は存在する。確かな規律が。しかし例外は例外なく存在する。私はその苦い例外を背負わされているということだ。おかげで毎日胃をキリキリさせられる。こんなことを口にするのも泣きたくなるほどの情けない話だが、私ではかばいきれない局面も多々あると思う。今から覚悟してくれ」
ニコルはその言葉を聞きながら、昨夜、コノメの母がぽつりと
目の前のバイトンが頼りない騎士であるという印象は受けない。となれば、そのバイトンの胃を痛めている人間があまりに規格外ということか――。
「あの二人も近々、公が処分に
「はい、わかりました」
ここまで
◇ ◇ ◇
「よう」
バイトンの
騎士見習いの身分であるにも関わらず、二階級上のバイトンの来訪にも地べたから
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