エピローグ(上)「変わる庭」
五
その間、フォーチュネットの
しかし、この
成長したリルルはニコルと
フォーチュネット
長男、アルス。
長女、アルシュラ。
次男、エクシード。
次女、リィルリィナ。
そして、リルル・ヴィン・アーダディス二十二
エルカリナ王国暦四百六十一年、四月一日。
リルルは第五子、三男のネクスの出産を
◇ ◇ ◇
王都の春の空を
「ネクス王子ご誕生、ばんざーい!!」「ばんざーい!!」
「アーダディス
フォーチュネット
道だけではない。
フォーチュネット
耳を
そんな
◇ ◇ ◇
「ふぅ」
一時間と少し前、まさに出産を終えたばかりのリルルは
ここには
少し前までは、リルルの身内ともいえる人々でごった返していた。
産後の
「お
「ありがとう、フィル」
フィルフィナが
「
「
フィルフィナは
「しかし、さすがに
渡されたカップを寝台脇のテーブルに置き、フィルフィナは揺らぎのない表情で言った。
「五
「単位がちょっと失礼すぎやしない!?」
「ああ、これは申し訳ありません」
少しも申し訳なさそうにフィルフィナは頭を下げた。
「五回目となるとコツもつかめてくるものよ。最初のアルスの時はかなり手こずらされたからね。フィルとロシュちゃんがいなければ、どうなっていたかわからないわ」
「すんなり出していただいてこちらも大変手間が
「相変わらず口が減らないんだから、フィルは」
「大年増ですから。それにしても、五人とも同じ誕生日に合わせて産んでみせるとか、いったいどういうコツなのですか?
「合わせたくて合わせてるわけじゃないわよ。合わせて出てきた子どもたちに聞いて」
「七人家族なのにお誕生日会が一日ですむとか、その辺は大変楽で助かります。このメイドの苦労にお気を
八十
対するリルルは――幼児の印象はもう完全に消え、二十二
この、エルフのメイドを
「フィル、窓を開けて。新しい空気を入れてちょうだい」
「うるそうございますが、よろしいのですか?」
「みんな、ネクスを、
「タダ飯タダ酒にありつこうとしている者が半分以上ですが」
「もう、フィルったら」
リルルは笑った。フィルフィナの
「しかし、ネクス様をお庭に連れ去られたままで、母として寂しくはないのですか?」
「もう何ヶ月もずっとお腹の中にいられたのよ。やっと解放されたんだもの、しばらく一人にさせてほしいわ」
「なるほど、そういう考え方もあるわけですか」
「ばんざーい!! ばんざーい!!」
フィルフィナが窓を開けると、風に乗って
「アーダディス
「まだやってるのね、あの
「希望者に
「いいじゃない。
「
「お
「ですから、
「もう、フィルったら」
リルルはまた同じ
窓を開け放った
カーテンを
時間の流れの中でも、変わらぬものはある――今は、まだ。
「しかし、おかしな庭ですね……」
そこで
「本当に、おかしな庭ですね……」
かつて、この庭は自分とリルルと、
ずっと、庭には大して手を入れていない。あの
しかし、この庭はもう、あの時の庭のままではなかった。
フォーチュネットの家が、自分たちが変われば、形を変えていない庭も変わるのか。
変わらないものなど、変われないものなどありはしないのか。
この区画の周囲を通行止めにしてもらってまでの生誕
変わることは
永遠に、あの時の庭のままで時が止まってくれればよかった――そんな、口にしたくてもすることのできない言葉をふたりは
変わらなければ、得られないこともある――たくさん、たくさん。
生まれてきてくれたアルスも、アルシュラも、エクシードも、リィルリィナも、ネクスも、変わっていく時の流れに連れられ、来てくれた存在だからだ。
「……時は何かを置き去りにし、失い、そして得ていく……」
「それは
ほろ、と不意の
身も心も大人となったあの時の幼子が。
あの時の幼子が見せていた
「時は、永遠に
――
あの、ねこさんのことを。
ねこさんたちのことを。
そして、
この世で得たものは、天の国で
歌うような調べの中で、
それは、長い長い、永遠と思えるような
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