「鏡の人形」
サフィーナが腕を引き寄せると硬質の
「サフィーナ、階段があったわ!」
「――リルル、危ない!」
力を断たれ動かなくなった二機の
「盾!」
左腕に力を込める。青白い光が盾となって現出し、レイピアを抜きながらサフィーナは風となって地を
「く――――!」
遠い雷鳴が何重にも落ちる音に耳を
「ふぅっ!」
「ダメじゃない! 私に注意したことを、あなたが
「サフィーナ――ごめんなさい、助かったわ!」
待ち
「リルル、私を馬鹿にしてはダメよ。私は昔から剣の
「あなたがいてくれてよかった。一人じゃできないことってあるのね……ありがとう、サフィーナ。私が間違っていたらなんでもいってほしい」
「そりゃもう、なんでもいうわよ。キスをする時に相手の唇を
「んにゃぁっ!」
リルルは
「次は十二階、残り時間は……あと二十七時間五十分……か……」
天井を見れば、どこにでも残り時間を示す砂時計と残り時間を示した数字が表示されていた。最下層の一階をのぞけば、約百二十分で十階を
「目的の百十九階まで残り、百七階。このままの調子で行けば……二十二時間弱で目的地に到着できるわ。約五時間の余裕がある……五時間……」
サフィーナの
「……たった、五時間しかないのよね……」
ここまで上ってくる間、複雑な迷路と
「――リルル、行きましょう。やれるかどうか、じゃないわ。
「……安い
「半年も先輩の快傑令嬢が後輩に負けたなんて世間に知れたら、もう
「そうでなくてはね――期待しているわ、先輩。
「ええ……行きましょう……」
一分の休息にいくらか体と心に力を与えられ、リルルとサフィーナはその場にへたばってしまいたい
◇ ◇ ◇
『――ニコルくん、
「っ!」
戻った部屋でソファーに座り、
下でなにが起こっているか、全く知らされない少年が
「二人は無事なんですか、リルルとサフィーナ様は――」
『安心してくれていいよ。二人がゲームオーバーに――つまり作戦
「ええ……」
『それで今、面白い場面なんだ。階層は十二階。キミも二人が今どうなっているか見たいだろう』
ニコルの正面の壁が発光し、ひとつの光景を映し出した。薄桃色と
「――リルル! サフィーナ様!」
『キミの声は向こうには伝わらないよ。彼女たちも、キミの声が聞こえてきたら気が散るだろうしね。で、問題の第十二階なんだけれど』
各階は迷路と聞いていたが、その階は一階と同じく拓けた階層だった。塔の外周の内壁と、中央の
『各階が迷路と
「強敵……?」
『ほら、彼女の前に二体、いるだろう』
映像がその対象を追って流れる。リルルたちと三十歩は離れたそこに、二体の人形が立っていた。
「……人形?」
人型――人体を
五歳の子供でもその姿を正確に描き写してしまえるような、単純
『まあ、見ていたまえ。とても面白くなるからね』
内心を
◇ ◇ ◇
丸腰の木偶人形がなんの構えも取らずに立ち
「えっ!?」「なにこれ!?」
人型の硬い
二体の人型の表面の鏡が、それぞれにリルルとサフィーナを写す。頭部には少女の頭、胸部には少女の胸、腹部には少女の腹というように写っている――いや、写っているというのは不自然だ。
鏡となった人型は、少女たちの姿以外のものを一切表面に投影していない。鏡とは
「――こいつ!?」
「身構えて、リルル!」
サフィーナが
「な――――!」
二人の少女たちが
快傑令嬢リロットと快傑令嬢サフィネルの前に現れたのは、快傑令嬢リロットと快傑令嬢サフィネルだったからだ。
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