約束
@isa00
第1話 高校二年生。
あれは高校二年のとき。
僕たちの学校では進級するごとにクラス替えを行っていた。一クラス四〇人の、全部で八クラス。学年だけで三〇〇人を超える。当然、知らない生徒もいる。
桜が咲き乱れ、春のぬくもりと爽やかな風が心地よい登校日前日。一年五組のクラスLINEに一つの通知が飛び込んできた。それは明日行われるクラス替えの名簿だった。このクラス名簿をクラスLINEに送ってきた人は、クラスであまり目立つことの無かった太田という生徒だった。印象としては……特にない。
クラス名簿の次に送られてきたのは、
「これはあくまでも予想です。注意してください。」
という事務的で無機質な、悪い意味で彼らしい一文だった。
なんだよ、予想かよと僕は思った。なんとか坂とかいう、今流行っているらしいアイドルの満面の笑みが太田のアイコンを満たしている。僕はそれを見て鼻で笑った。
その後一年五組のクラスLINEはクラス予想名簿が送られてきてからは一向に進展はない。
「ありがとう!」とか「これどこで手に入れたんだ!?」とか誰か相手にしてやればいいのに、と思いつつ、僕も相手にする気にはなれなかった。おそらく太田のトーク画面には既読の数字が増えていくだけだろう。太田の行動に意味を求めず、スマホの電源を落とそうとしたとき、クラス名簿の真ん中からやや下にある、一人の名前に目を奪われた。
「テラダ ミオ」
名簿には学年全員の名前がカタカナで印字されている。
ミオ。
珍しい名前だと思った。ただ、それだけしか思わなかった。これが僕の青春が走り出した瞬間だった。
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