誰かを好きなあなたが好き

@seita1026

第1話

「私、中島くんのことが――」


クラスで1番人気の美少女に告白されたい、そう思ったことはあるだろうか。

当然僕はない、何故なら――。


***


「最悪だ……」


先週の金曜日の放課後、小鳥遊に告白された僕は振った、その後すぐ吐いた。

それがどこから広まったんだか知らないが、大方泣き腫らした小鳥遊の顔を見た友人という肩書きの取り巻き共が、事情を聞いて「酷い」とでもほざきながら拡散したのであろう、ゴシップ好きのミーハー共め。


別に小鳥遊自体に対して僕は嫌悪感を持ち合わせてはいない。こんな僕みたいな人間に対しても慈愛を向けてくれる、一般人からすれば女神のような存在だとすら思う。


そう、慈愛を向けてくれる…………。

「愛」という単語を考えただけでまたドス黒い気持ち悪さが込み上げてきて、僕は閉じこもっているトイレの個室でまた吐いた。


「ダメだ、これじゃあとても教室になんかいける感じがしない」


吐いた時のために持ってきていたペットボトルの蓋を開け、水で口をすすぐ。

そのまま気だるさを引きずって起き上がると、保健室へ向かうためにフラフラと歩き始めた。


職員室の前や人が溜まりやすい場所を避けながら保健室にたどり着くと、養護教諭は居なかった。


「まぁ、いいか……事後報告でも」


呼びに行く気力もないし、とにかく今は人が居ない所で安静にしたい。

この3日間ほとんど睡眠を取れていなかった僕は、仮眠でも出来ないかと保健室の硬いベッドのカーテンを開けた。

しかし――


「アンタ、誰?」


そこには先客が居た。


「ぁ、ごめんなさ、い」


驚いて後ろに下がりカーテンを閉めようとした時、足が絡んで転倒してしまう。


「ちょっと、大丈夫!?めちゃくちゃ顔色悪いけど!」


同学年くらいに見える金髪の少女がベッドから飛び出して駆け寄ってくる。


「だいじょうぶ、です……」


「体調悪いからここに来たんでしょ!隣のベッド空いてるからしばらく寝てて!先生呼んでくるから」


「呼ばないで!」


「え?」


なんで?という顔で少女が僕の目を見る。


「あまり今、人と話したくないから」


少女はそれを聞くと、


「そっか。……わかった」


とだけいい、僕が隣のベッドに座り込むまで支えてくれた。

僕はカバンとブレザーを床に放り投げ、ワイシャツのボタンを上から2つほど外しネクタイを取ったところで、心労と眠気から意識を手放した。

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