休息
ダンジョンでは色々あったが、あれから宿舎へ戻り友人たちと共に部屋で過ごしていた。今は以前にも遊んだマジックカードという魔法のゲームを見物していた。
「ドラゴンを融合して天界の緑龍を召喚だぜ!」
アドリアンがカードを置くと、緑色の龍の幻影が浮かび上がる。
「オレは初代王セバスに魔法剣士シャマルにその他諸々を一気に召喚!」
逆サイドにはゼオンが召喚した2体の英雄が出現する。
「最強のドラゴンで蹴散らしてやんよ」
「かかってこい!」
ドラゴンが2人の英雄へ炎を吐く。
「効いてないぜ」
「何だと」
「次はこっちの番だ」
英雄たちの剣技でドラゴンが瞬殺される。
幻影は消え、カードが魔法の力で自動的にトラッシュゾーンに送られる。
「やったぜ、オレの勝ちだな」
「畜生、また負けたぜ」
ゼオンがアドリアンに勝利する。
「ドラゴンデッキは単純な攻撃力は高いけど展開力がな」
「そうなのか。でもドラゴンを使って強くなりたいぜ」
「サポート札を入れればゼオンにも負けないデッキが作れる。今度俺が強くしてやるよ」
「さすが先輩。あざっす」
ヒューベルト先輩はマジックカードにも精通しているようだ。
「エリック、お前もやって見るか? 面白いぞ」
ヒューベルト先輩が1人で暇そうにしているエリックに声をかける。
「僕はそんなお子ちゃまのおもちゃに興味ないね」
「やってみると案外面白いぞ」
「僕はそんなもののために合宿に来たわけじゃない。遊びと勘違いしているこんな奴らと一緒にされるのは御免だね」
「ったく、初日からそんなんだと持たないぞ」
常に緊張の糸を張り続けることは不可能だ。
適度に娯楽を楽しむことも必要なことだとオレは思う。
「お前ら、そろそろ就寝の時間だぞ」
「「「はーい」」」
カイル先生に言われ寝る準備を整える。
「ヒューベルト、お前はちょっとこっちに来い」
「はいはい」
ヒューベルト先輩はカイル先生に連れて行かれる。
「ちょっとトイレに行ってくる」
オレはそう言って部屋を出た。
* * *
トイレを済ませて、廊下に出る。
最短ルートで部屋に戻るのもつまらないので、遠回りして部屋に戻ることにする。
暗い廊下を歩いていると、誰かが佇んでいた。
確かあそこは女子たちの部屋だ。
「何やってるんだお前?」
扉の前で仁王立ちしていたのはニコだ。
「見ての通り、リース様のお部屋の警備です」
「警備なら大人に任せればいいんじゃないか?」
一応、リースの警護のために王都から近衛兵が派遣されている。それとわからないように一般人のように変装はしているが。
「そうはいきません。これはわたくしの仕事ですから」
ニコはリースを警備するための特殊な訓練を受けているのだったな。
「お前も大変だな」
ニコの立場には同情を禁じ得ない。
「お言葉ですが、わたくしはこの仕事が大変だなんて思ったことはありません。むしろ光栄です」
「それは言わされているとかではなく、本心か?」
「勿論。嘘偽りなどありません」
ニコの鋭い眼光が本心であることを物語っている。
「与えられた使命を全うする。それは何よりも素晴らしきことです。それがリース様にお仕えすることならなおさら」
「変わった奴だな。オレは嫌だな、その限られた自由さえ奪われるのは」
オレがニコの立場なら、こんな仕事放り出してしまうだろう。
「わたくしにとっては、使命のほうが大事です。自由と言う安直な言葉に惑わされ、彷徨う子羊になるほうがよっぽど恐ろしい。違いますか?」
「違うな、オレにとっては。使命ってのは誰かに与えられるものじゃない、自分で見つけ出すものだ」
だからこそオレは、オレの手綱を引こうとする奴に抗う。
「ともかく、お前の考えは否定しないが、1つ忠告しておく」
「何ですか?」
「睡眠はちゃんととった取ったほうがいい。本当のピンチのときに実力が発揮出来なくなるぞ」
オレはそう言葉を残しニコの元を去った。
どんなに学校ごっこに興じていても、ここに来た理由を忘れたことはない。
それはオレにとって自由を得るために必要なものなのだ。
ニコ・オクスライン、いすれお前とは……
王立魔法学園の異端児(マーベリック)~元魔力0の魔法剣士、実力を隠して魔法学園へ入学する~ 宇佐春人(旧緑茶) @Remalia99
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