仮想の国のアリス序章〜Story OF THE Ancient Girl〜

門矢稜星

多発失踪事件①

 私は菊谷きくたにしずえ。56歳。専業主婦をしています。家族構成は私と旦那と息子が一人。旦那は仕事で忙しく、滅多に家に帰らないので、基本は息子との二人暮らしです。


息子は25歳になっても働いてくれません。いつも自室に閉じこもってゲームばかりしています。


宅雄たくおーッ! いい加減、仕事探しなさいッ!」


と、喝を入れても返ってくるのはいつも怒号だけ。


「うるせぇよクソババア! ゲームの邪魔すんなよッ! カスッ!!」


 ある日、私は宅雄のことについて悩みながら、いつものようにお茶を淹れます。それを一口飲んでいると、2階から悲鳴が聞こえてきました。私は急いで宅雄の部屋に向かいます。


「う、うわぁぁぁぁッ!」

「宅雄ッ! 大丈夫かい!?」


扉を開けると、誰もいない。今までゲームをしていたはずの宅雄の姿がありませんでした。


砂嵐のモニターと後ろに倒れたゲーミングチェア。床に散乱した漫画。まるで何かに襲われたかのような宅雄の部屋だけが、そこに広がっていたのです。

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