第13話 撮影会でイチャつく回
「は?」
莉加ちゃんはそう言って頭に疑問符を浮かべた。まあ無理ないか。ケーキのお預け食らって食べる条件がカメラマンなのだから。
「なんで?」
その疑問には穂香が答えた。
「この写真たちのせいよ。」
莉加ちゃんは穂香が見せた画像を見て全て察したらしい。この場合、穂香が答えたと言うより穂香が答えに導いたと言うほうが正しいか。
「なるほどね。要するにお姉ちゃんの嫉妬を慰めるのに付き合えと。」
「ま、まあそんな感じ。」
穂香が若干顔を赤くしながら答えた。
「ごめんねユージお兄ちゃん、いつもお姉ちゃんのワガママに乗ってくれて。」
これだけ聞いてたらどっちが姉か分かんなくなるな。
「いや別に、俺も面白いって思って乗ってるだけだから。気にしなくていいよ。」
「それで、どういう感じのを撮りたいの?」
俺と穂香はラブコメのシーンを見せながら事細かく説明していった。莉加ちゃんはなぜか若干呆れた表情をしながら聞いていた。
「まずはどうする?」
「うーん、これかな。」
俺の質問に穂香が答えて撮影会が始まった。
「ユージお兄ちゃん、表情かたいよ!」
「そんなこと言ったって俺がいろんな表情出せると思うか?」
「無理なだと思うけどできるだけ頑張って」
「お姉ちゃん、もっとユージお兄ちゃんにくっついて!」
「う、うん…。」
「今更恥ずかしがってるんじゃなーい!」
そんなこんなありながら、撮影は順調に進んだ。
そして最後のシチュエーションだけになった。
「最後なんだっけ?」
「えっと、これだな。」
最後のシーンは主人公のベッドの上で主人公とヒロインが抱き締めあって眠るシーンだ。
これだ、と説明した瞬間、穂香は顔を真っ赤にした。
「どうした、穂香?」
「い、いや、思ったより恥ずかしくて…」
「だったら最初から選ぶなよな。」
「あの時は対抗したいってことで頭がいっぱいだったの!」
「じゃあ止めとくか?」
「ううん、やる。」
穂香は即答した。
ベッドを使うということで三人で二階にある俺の部屋に移動した。
「変わってないね、ユージお兄ちゃんの部屋は。」
「久しぶりに部屋に入って第一声それなんだ。」
褒められたのか貶されたのか分からない言葉に思わずツッコんでしまった。
「いや、別にキレイなままだなって思って」
「まあ定期的に掃除はしてる。」
「お姉ちゃんも見習ったら?」
「う、うん…。」
ホントにどっちが姉か分からない会話だな。
「というか穂香の部屋、そんなに汚いの?」
「まあいろんな服を脱ぎ散らかしてるからね。」
それは心配だな。
「掃除しに行こうか?」
冗談交じりに言うと、
「ホントに!?」
穂香が目を輝かせた。そんな期待を込めた視線を向けられてもなあ。そんなに酷いのか、穂香の部屋は。そう考えていると、
「ダメだよ、お姉ちゃん。」
そう言って穂香を説得し始めた。そして説得していくにつれて、穂香の顔が赤くなっていった。一体莉加ちゃんは穂香に何を吹き込んでいるのだろうか。
そうこうしていると、
「と、とにかく撮影しよっ!」
穂香が大きな声で言った。そういえば部屋にきた目的は撮影だったな。
「じゃあとりあえず、二人とも寝転がってみて。」
莉加ちゃんの指示のもと、二人で並ぶように寝転がってみる。寝る際に広めのスペースを確保しようとして使っているダブルベッドも、二人で使うといつも寝る時は一人な分、狭く感じる。
「裕司のベッド久しぶりだなぁ。はぁ、あったか~い。」
隣で穂香は俺のベッドでリラックスしている。
「穂香、写真撮るぞ。」
「う、うん…、抱きしめあって、だよね?」
「ああ、ほら、来いよ。」
そう言って俺は腕を穂香に向けた。穂香はその中に恥ずかしがりながらもすっと収まった。そして穂香を抱きしめると、穂香も抱きしめ返してくれた。
「こんな感じか?」
俺は莉加ちゃんに尋ねた。なんか穂香が少しビクビクしているから早めに終わらせたい。
「あーえっとー、そのまま二人とも目を閉じて。」
莉加ちゃんがそう言ったため俺と穂香は目を閉じた。すると穂香のビクビクという動きはなくなっていった。
「はーい撮るよー。」
パシャッ
「うん、バッチリ!」
「ありがとう莉加ちゃん。ほら穂香、終わったぞ。」
そう穂香に伝えても反応がない。
「お姉ちゃん、ねえお姉ちゃん。」
莉加ちゃんが問いかけてもやはり反応がない。聞こえるのはすぅ すぅという規則正しい呼吸だった。コイツ…
「「寝てる。」」
俺と莉加ちゃんの言葉が被った。
さてどうするか。穂香が俺を抱きしめたまま眠っているため、俺がベッドから抜け出せないのだ。少し身をよじらせただけでもそれに抵抗するように抱きしめる力を強くする。そして余計抜け出せなくなる。そしてその度に俺に柔らかい胸の感触が伝わる。
ただ、穂香の優しい寝顔を見ていると俺まで眠くなってきた。
「ユージお兄ちゃんも寝る?」
様子を察したのか莉加ちゃんが問いかけてきた。
「ああ、そうするよ。」
「お姉ちゃんのスマホ、置いておくね。」
そう言って莉加ちゃんはスマホをベッドの上の置き時計の隣に置いた。
「ありがとう。約束通りケーキは食べていいぞ。冷蔵庫の中にあるから。」
「うん、分かった。」
「あ、あと今日の晩ごはんはカレーにする。」
「やった!」
寝ている穂香に気を遣いながらもやはり妹というあどけない様子を残しながら莉加ちゃんは小さくガッツポーズをした。
「それじゃあおやすみ。」
そう小さく言って莉加ちゃんは静かに部屋を出た。
そしてそれを見送って穂香の寝顔を見つめながら、俺も意識を手放した。
〈あとがき〉
次回、穂香視点で本編を書きます。
リアルとの合間を縫って書いているため多少文に違和感を感じることもあるかもしれませんが、ご容赦ください!これからも良い作品をお届け出来るよう精進してまいります。
少しでも面白い、続きが気になるという方は
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