幼少時代とカップ麺

ta-KC

幼少時代とカップ麵

「ありごとうございました!!」

店員の声を背にコンビニを出る

すっかり周りは雪景色になった北海道・・・

体を丸めてそそくさと家路につく

その手には

ビニール袋

そして

中身はおにぎりとカップ麺

今日の夕食である・・・

「早くかえろ・・・」

そう独り言をつぶやき

白い道を歩く

サッサッサ

なんともいえない新雪の踏みしめた時の音

軽快なリズムとなり家路までをどこか楽し気に彩る

サッサッサ・・・

ガチャ!

「ふー」

バダン

開いたドアは自動的に音を鳴らしながら締まる

頭にのった雪を払い

部屋に入る

電気をつけて何気なく買ってきた袋をテーブルの上におく

すると

コロン

っと赤いカップが転がる

そこには『赤いきつね』と書かれた面が上になった状態で

転がってきたカップ麺

なんとなく見つめてそして思う

(そういえば俺は赤いきつねか緑のたぬきかどっちかといえば・・・・)

毎年やっている某有名俳優さんが起用されたCM

「赤いきつねと緑のたぬき~♪」

のセリフが頭に流れながら

「俺は断然赤いきつねなんだよな」

そういってなんとなくおかしくなる

なぜかというとこれも毎年になっているが

赤いきつねと緑のたぬきどっち!?

みたいなコンセプトのCMも流れていて

毎回見るたびに

(赤いきつねだな・・・)

と考えていて何となくCMも赤いきつねが優位?

的な感じでやっている

そのたびに

(だよね)

と心の中で共感したそんな日を思い出したからだ

そんなことを思いながら湯をわかし

カップを開けて準備をする

湯を注ぎ5分・・・

買ってきたおにぎりをほおばりながら

思いふけっていた

さっきの回想がもっと奥へと入り込む

もともとなぜ『赤いきつね』なのか?

自分の中でたどる

赤と緑もそうだが

正直他社からもカップうどんは出ている

しかし

手に取るのは『赤いきつね』

味が好きというのはあるだろう

あと、あげが好きとか

でもおれはこの麺がいいと思っている

なんというかなつかしい・・・

・・・

そう懐かしいのだ!

記憶は一気に幼少時代に飛んだ・・・


お休みの昼下がり

家族が揃うリビングそこににはいくつかのカップ麺

どれか好きなのを選んで食べていいというそんな時間が

よくよくうちにはあった

その中に赤いレベリングのカップ麺・・・

『赤いきつね』だ・・・

当時は適当に選んで食べただけだった

しかし

そのあげの甘さと麺のどくどくな感触にいつのまにか

俺の定番になっていた

そしてその時間は俺にとって『一家団欒』そのものだった

甘くておいしくて・・・

そして幸せで・・・

『赤いきつね』はそれの象徴・・・

言い過ぎかもしれないが

たしかになつかしさとして俺の中に形としてとどめてくれているのが

このカップ麺なのだろう・・・


5分の待ち時間

回想とともにおにぎりをほおばり

ようやくカップの蓋をあける

そこにはおおきなあげとかまぼこ

そして麺・・・

箸をいれて持ち上げてそのまま口に運ぶ

「ふ、ふ、ふ、ズズズーー」

あたたかな麺をすすり

「うん、おいし・・・」

いつもの味に落ち着く

多分細部で改良などもされているだろうけど

思い出は変わらず

俺になつかしさというもう一つのあたたかさをあたえてくれる

(明日、電話しようかな)

特に用事はないし

特段ひさしぶりなわけではない

けどなんとなく母や父の声を聴きたくなった

そう思いながらスープをすする

「ごちそうさまでした」

食事中にできた小さな予定を胸に箸をおいた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼少時代とカップ麺 ta-KC @take0520

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ