第79話 島流し

『そっちに一人送ったから!』

 系列店の姉さんからLINEがきた。

 問題児の嬢のことだ。

 私も彼女を知っていた。

 人手が足りないと、こちらに手伝いにくるからだ。

 ひしゃげた顔で、ひしゃげた声で喋る。

 己の胸をもみもみ接客する、実に下品な女だった。

 おまけに横柄で自分勝手ときた。

『総スカンだったんだよ!』

 姉さんが続ける。

 そりゃあ、そうだ。

『こっちも要らない!移送しないでー!!!』

 私は訴えた。

 幹部と一発ヤッたのだろう。

 彼女はクビを免れ、系列店をたらいまわしにされていた。


「一応ママやらせてもらってたんでー」

 以前は彼氏の店で働いていたらしいが“お飾り”だったため、経理や人心掌握をマスターしていない。

 恋人関係を解消し、ビジネスパートナーとしても使えなかった彼女が、元彼から離職を迫られたのは想像に難くなかった。

 水商売で同僚(特にホステス)に嫌われるのは致命的だ。

 ホステスは一人仕事に見えて実は協業だからだ。

 傍若無人な彼女は、まもなく、こちらでも総スカンを食らった。

 彼女の話し相手をするのは事情を知らない新人嬢だけだった。


「あー!辞めたくない!辞めたくないなー!」

 彼女が騒いでいる。

 店長に退店の旨、伝えたらしい。

 誰からも、当該幹部からも、引きとめの声はかからなかった。

 たらいまわしにできる系列店が残っていないのだ(笑)。

「本当は辞めたくないんだよー!」

 周囲を煽動したが完全無視されるに終わった。




 


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