第67話 ○オカードおじさん

「覚えてないの!?」

 フリー客に詰めよられる。

『誰や?』

 まるで記憶にない。

「この前○オカードあげたじゃん!」

「あー!」

 顔は覚えていないが、○オカードをくれたおじさんがいた。

「頂きました!夜食代になりました!ごちそうさまです!」

「もー!」

 おじさんはご機嫌斜めだ。

 よく貰う○オカード。

 額面は決まって五百円だ。

 だからよ。

 場内指名(フリー客から取る指名)すら貰っていないのに、記憶に残るはずがない。

 こちとら商売人の合理脳よ。

 よなよな、大勢のおじさん相手にするもんで、記憶のむだ遣いできないわけ。

 だから、指名客以外は何度会ってものっぺらぼうよ。

 フリー客でもチップが万札なら、否が応でも記憶に残るけれど(笑)。


 ○オカードをくれるのは“国際展覧会”や“国際競技大会”などに携わるおじさんたちだった。

 貰うほうは刷りこまれたシンボルマークなどスルーして使っちゃうわけだが(笑)。

「ほら、これ」

 皆さんフラワーホールにそれっぽいピンバッジを着けていて、得意げに見せる人もいた。

 真面目そうな人も、贈収賄系の人も、いっしょくただ。

 くれた○オカードは保険外交員の販促グッズのように自腹なのか?

 支給されて課税対象か?

 ただ貰いの流用か? 

 なんとも、気になるところではあった。





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